映画『ブラックナイトパレード』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

ブラックナイトパレード

 

 

世襲サンタ

クリスマス映画。久々に福田さんのトンデモコメディが見たくなり最新作を拝見。最近は『新解釈三国志』『赤ずきん』と2本連続で見逃して英勉に浮気してたが、やはりギャグのシャープさからすれば福田×ジロちゃんの尖ったテイストには敵わない。ただ今回は割と本気で感動路線に持って行こうとしています。サンタクロースを育成するブラック企業に就職した若者が出世してゆく中で実はそれまでの自分の人生がこの企業と深い関りがあった事に気付くという超ご都合主義が一周回ってナンセンスにぶっ飛んじゃった感じの内容。主人公は働き者の良い子なのに報われずコンビニでバイトしながら就活するがお祈りメールばかりで恋人を作る暇もなくクリスマスもバイトで潰れるという有様。彼の報われない人生は実は父親の跡を継ぎサンタになる為の試練。今作の世界では赤いサンタは死滅してシビアに子供を査定する黒サンタが主流になっているが、この主人公は魔女の妨害をかいくぐって赤いサンタになれる素質があるという。どうも元々黒サンタってのは悪い子に臓物を送ったりするヒールキャラらしいのだが赤サンタの絶滅に伴って子供たちにプレゼントを配る役割の方も引き受けてるようだ。

 

トンデモ展開は相変わらず福田節ではある訳だが設定自体は実に象徴的に今の日本の若者が晒されている環境を物語っています。つまり「良い子は報われない」「スペックを常に試される」「理不尽を乗り越えねば自己責任」「でも乗り越えて成功者になっても搾取する」みたいな無理ゲーをかつて無償の愛を与えられて甘やかされて育ったバブル世代の我儘を通す為の我田引水で押し付けられてる世代が夢を見ようとしたら今作のようなバランスになるのではないだろうか。いわゆるワンピとかで"Dの名を受け継ぐ者"みたいに象徴的に描かれる世襲にしか救われない世界観。本作も主人公がサンタの息子でなければ救われないシビアな世界です。ジャパニメーションによくある俺スゲー系の妄想の中に実は自分は凄い家系の生まれである事に気付くってパターンがある訳だが正にこの主人公は自分のポテンシャルを開花させる場を世襲で手に入れるって訳です。その程度にしかクリスマスに夢を抱けない。これは我々大人がクズ化したせいでもあり、そもそも俺スゲーの妄想を虚構で満たすナルシストが日本社会を構成してるからです。その強欲過ぎる承認欲求をクソガキ老害どもが捨てて大人にならなければ子供たちは夢も見れません。