映画『幸せのバランス』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

幸せのバランス

 

 

離婚はセレブ特権

 

下流老人に陥る男性に多い脱落理由はプライドが高過ぎる事だとよく云われる。この物語の主人公は正にそのタイプ。過去の不倫を責められ妻と別居した事から借金返済に追われるワーキングプアの貧困地獄へと陥ってゆく。「離婚ができるのは金持ちだけの話だ」と友人たちは妻との復縁を勧める。だが自分の窮状を隠してまで父親の威厳を守りたいようだ。一方で自分の所で一緒に暮らそうという愛人の申し出には一切応じない。これ以上家族と拗れるのは避けたいようだが復縁したくとも窮地に追い込まれた自分を家族に晒せないって訳だ。この主人公は公務員で役職もあり傍から見たら生活が安定しているようにも見えるが実際は資産は全て抵当にして様々なローンを組む事で幼い子供たちに金がかかる家族との暮らしを支えている。それだけに家を離れ一人分の居住費用を賄おうとするだけで資産計画は脆くもあっさりと崩れてしまう。よく金の切れ目が縁の切れ目なんて云われるが、その逆の現象、縁の切れ目が金の切れ目という具合に助け合えない状況が貧困を生み出してしまうのだ。やはり余裕のない不況の時代が長く続いているからなのか身につまされてしまう。すぐに親しい人間に対しては弱音を吐く自分には起こらないであろう状況とは思いながらも、ただただ見ていて辛かった。やはりイタリア映画は生々しい。この手のテーマだと、もっと揺れ動く家族の絆って所にフォーカスする作品が多い中、今作品はモロに貧困をフォーカス。それにしてもキャストが私的に現代イタリア映画界を代表するようなヒットメイカーたちの失敗作にばかり当ってる微妙に残念な二人が共演って感じで、その面でも見ていて居た堪れなくなってしまった。