映画『君トン』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

君たちはまだ長いトンネルの中

 

 

経済論より心意気

いわゆる積極財政派の主張をマンガ化した"私立Z学園の憂鬱"をベースに脚色された青春映画。基本的に藤井聡や三橋貴明や山本太郎という近年の政治や言論においてポジショントークに走らない比較的マトモな連中の主張をそのまま映画化したって感じです。ネットメディアで広く知られる中では割とマトモなのでコロナ渦で仕事が減った監督が社会に目を向けた時にスマホから真っ先に飛び込んで来て納得できるコンテンツだったのだろう。かく云う私もこの辺の言論人には共感できる事も多いので応援しています。ただ肝心のMMTとかの経済政策に関しては正しいというより正しかったという認識です。デフレ時には減税や財政出動をして景気を立て直さねば結果的には生産性が落ちて税収が減ってしまう。セーフティネットが強固な国ほど成長の芽は育ち易いのです。ただ今思えばその最後のチャンスがアベノミクスだった。コロナ敗戦や経済制裁による近年のスタグフレーションはコストプッシュ型インフレだから関係ないという論調があるがインフレはインフレです。

 

「このままでは日本の生産性自体が棄損される」と何年も前から彼らは繰り返し警告して来た訳だが、それが現に起き続けているからこそ日本は財政出動に足る充分な生産性を既に失いつつあります。ご利益信仰的に彼らの経済政策が実現されたら日本が助かるとは思っていません。それでも少しでも世の中を良くしたいという献身的な公共心に惹かれるから、せめて正しい側に味方する気持ちで彼らを応援しています。マスメディアは経済大国時代の妄想に縋ったヘイトポルノを垂れ流し我田引水しているが、それに比べたら希望的観測って意味では同じだが、その目的意識が公共にあるって所が大きく違います。そんな風にリアルでシビアに物事を見ていてもポジティヴに振舞う健気さには寄り添いたくなります。この主人公に味方する勉強熱心な元役者議員って奴は山本太郎をモデルにしているのだろう。その手のマトモな連中には少しでも希望を託したい。この映画タイトルを聞いた時、真っ先に思ったのは、そのトンネルの先には出口がない可能性の方が高いという厳しい現実。状況は絶望的だがポジティヴにできる事を少しでも実現しようとする若者たちの健気さだけは可能な限り守りたい。そうでなければ今後、自殺率は更に上がり続け更に絶望的な国になるだろうから。それこそ山本太郎が繰り返してる通り「死にたくなるような国、止めたいんですよ」に一票。