『薄暮』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2020-06-02の投稿

薄暮

 

 

どこにも居場所がないんだ

 

3.11のトラウマを抱えた音楽少女と絵画青年の青臭い青春ラブストーリー。この意味深な過去故に当然何かしらの吐露があって然るべきなのだが驚くべき事に、それをせずに典型的なボーイミーツガールにまとめてしまっています。この音楽少女は最近になって漸く地震津波のPTSDから回復した。この絵画青年は福島の汚染区域出身で故郷に戻る事が出来ない。そういった昨日まで普通にあった情景が突然失われてしまう経験が情景を絵に留めたいという衝動を生み絵画を始めた。この少女が見た夢の中で青年は「どこにも居場所がないんだ」と呟く。そんな彼らの過去にはどんな傷があるのか。その部分がすっ飛ばされて安易なイチャラブに流れる方向性に呆れるを通り越して驚かされました。

 

そもそも高校生同士が告って付き合うって営みは通過儀礼的で、それぞれの思いの強さが伝わって来ません。その行為事態は世間体を意識してやるものです。そうではなく感情のままに強く抱きしめたり泣いて縋り付いたり、それぞれの必然を吐露する所にこそ本当の純愛や絆が描けるのです。だからこそ相手が自分を受け入れた瞬間に、もし感情のままに動くのであれば、すべきは接吻ではなく抱擁なのです。もう離したくはないって情動に突き動かされるのだから。そういった意味で最初は等身大の青春ドラマとして好意的に見ていたが話が進むに従ってキャラの行動がどんどん表面的な方向に流れてしまい欺瞞的な語るに値しない所へ落ち着いてしまった。これは好意的に見ても前向きな心の回復とは捉えられません。