『天使の分け前』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2013-04-1の投稿

天使の分け前

 

 

危険運転手を殴るのは正当防衛でしょ

 

ウィスキーテイスティングによるサクセスストーリーかと思いきや

単にチンピラがウィスキードロボーになるだけのアウトローな内容でした。

主人公は前科者だが息子の出産をきっかけに更生しようとしている若者。

彼の犯した罪は暴行。喧嘩っ早いのだ。周りの環境も彼を暴力に走らせる。

いわゆるスラムの貧乏人は力で気に食わない奴を捻じ伏せようとする。

このような背景はいかにも社会派ローチらしいと云えない事もないが

やはり『エリックを探して』やこの作品はイベント映画なのだろう。

矢口の『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』みたいな路線。

同じ英国で例えるならばマークハーマンって感じのイベント性のある物語。

ただ話が向かう先はやはりローチらしく狭い世界にまとまってしまう。

 

いつもローチ作品は観客に行き場のない憤りを残します。

今回も理不尽にイライラさせられるポイントがありました。

今回は社会の不平というよりは登場人物個人に対してですが。

喧嘩に負けたからって相手を裁判で罰しようとするチクリ魔ども。

いるよね知力も腕力も敵わないと分った途端に弱者装うクズって。

危険運転の仕返しで殴られたら、殴った通行人を刑務所送りにする大学生。

服役後も殴った通行人(主人公)をネチネチと責め続ける彼の親たち。

自動車って凶器で殴り掛かって来ておいて何を善人面してんだって感じ。

車で危険運転する糞ブルジョワのボンボンは全員死刑にしてやりたい。

なんて事を云うと私自身の育ちの悪さが露見してしまうからこの位で。

 

母国でのケンローチ監督の評判は良くはない。

なぜなら生傷に塩を擦り込む様なネタの作品ばかりを撮るから。

彼の社会派ネタにウンザリしないで耳を傾けるのは海外の評論家。

母国の一般大衆からは嫌われているから、ヒットは狙えない。

今回の作品は皮肉にも社会派としての要素を排する事で

無難な作品を作り一般大衆の支持を勝ち得たって所だろうか。

こんな不況の時代には普段の彼の様な暗い作品は好まれない。

何だかんだで今回の作品は人間臭いコメディに仕上がっているから

こんな不況の時代でも好まれる明るい内容に落ち着いています。

ただローチであるか否かを別として一般的にどうかと云えば

普通にちょっとクスッとさせられる程度の内容でした。