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中学受験塾教室長15年目◆中学受験 小6になってグンと伸びる子、ガクンと落ちる子 【完全版】著者◆中学受験の勉強法や情報を発信します。

第2章 中学受験の最大の難所(5年生後期)その2

 

5 リセット願望との戦い(算数)

 
 第2章のタイトル「中学受験の最大の難所」の通り、5年生後期の算数こそ、その難所たる原因です。先の見えない閉塞感から逃れたい一心で中学受験を断念というリセットを選択してしまうご家庭もあります。しかし、この閉塞感はみんなに共通していることで特別なことではありません。人生におけるハードルをどう乗り越えるか。この中学受験を通して親子で人生のシミュレーションしてみようではありませんか。この時期にハードルの乗り越え方を学べば今後の人生にも大きな自信となります。リセットするという安易な解決策を選ばないでください。各単元別の話題に入る前に算数の得意・不得意によってこの時期にかかえている問題点への処方箋を示しておきます。


この時期にかかえている問題点への処方箋

(1)算数得意でその他の科目も特に問題なし

 4年生まで算数を初めとして、どの科目も万遍なくこなしてきているタイプの子についてです。5年生でもおおむね問題ないことが多いでしょう。ただし、気をつけないといけないのは、そういうタイプは、一度つまずくと一気に崩れます。

 これまでに、完璧にこなしてきているだけに、一度つまずくと立て直すのに苦労します。特に男子で、これまで問題なく来ている子は、一回壁にぶつかると、自信を喪失し、これ以降なかなか浮上できません。5年生になると、学習内容が飛躍的に難しくなります。また、学習する量も一気に増加し、これまで完璧にこなしてきたことで、安定した成績を収めていたとしても、5年生の段階になると、こなしきれなくなってくるのです。その結果、テストで結果が出てこなくなり、モチベーションも低下、勉強に対して悪循環になってしまうのです。

 対処法としては、親子ともども、理想を追いかけすぎないでほしいという話をします。テストで、いい結果を出すためには、これだけの勉強をしなくてはいけないだとか、テスト中に起こってしまう様々なミスについて、完璧にこなさなければいけないだとか、理想を追いかけすぎると、かえって悪い方向に流れます。それぞれの子ども達にとっての理解度は様々です。また、ミスなども決して0にはならないものです。ここまでできていればおおむねOKというラインを見定めていって、できなかった部分や、理解度が浅かった部分などは、また6年生になってやるんだという大きな気持ちを持ってほしいものだと思います。


(2)算数得意だが、国語は苦手(いわゆる理系の子)

 受験勉強を4年生から始めたとしても、5年生になると1年間もやってきたことになり、その頃になると、苦手な科目・得意な科目もしっかりと色分けされてくる頃です。特に、男子に多いのが算数は得意だが、国語は駄目というタイプです。そういうタイプの子にとって5年生になってから注意してほしい事がいくつかあります。

 4年生までの算数と、5年生からの算数では大きな違いがあります。前述したとおり内容・量の違いもそうですが、内容で、最も大きな違いは、これまで具体量をメインに扱ってきたものが、抽象的な数字を中心に扱い始める点です。

 例としては、分数・割合・比の単元です。これまで実数を扱うことが多かったのに対し、イメージしづらい分数や、全体を1と置き換えて考えていく割合などは、センスの良さでどうにかクリアできていたものも通用してこなくなります。壁にぶつかると算数を頼みにしていた子にとっては、これまでの自信を回復するのに時間がかかります。このような事態にならないようにするためにはどうしたらよいのでしょうか?

 対処法としては、次の二つをお話させてもらいます。
 一つ目は、あまり自分を(自分の子を)理系と決め付けないでください。算数はできないといけないという思い込みは、他の科目はできなくてもいいという思い込みにつながります。また算数が崩れた時のダメージは計り知れません。5年生の頃になると、自分の好き嫌いなどがはっきり出やすくなってきます。そのような時に、理系というカテゴリに当てはめていくのは危険です。

 二つ目は、結果を追い求めすぎないことです。少なくとも、4年生まで算数ができていたということであるならば、算数嫌いではないはずです。結果をあまりに意識しすぎると、結果が伴わない=算数嫌いという構図に当てはまりやすくなります。

 (1)、(2)ともにあくまで、悪い方向に流れていく時の一例です。入試での最重要科目である算数が4年生まで順調に来ているというのは、受験に対して明るい道が開けていると考えても差し支えありません。その後も順調にいくことがほとんどですし、特に算数嫌い(勉強嫌い)でなければ、ほぼ問題なくうまくいきます。ただ、どんな子にも、何かのきっかけで、よかったものが反転駄目になるということは覚悟もしておかなければいけません。そんな時に、周りにいる大人たちが、どう手を差し伸べていくのか、そこが大切なのです。


(3)算数苦手で国語は得意(いわゆる文系)

 男子には少ないタイプですが、国語のほうが得意という子もいます。最近は、男子・女子で文系・理系を語るのは少し間違いなのかもしれません。(女子の理系タイプは増えている印象です)国語はできるのに、算数ができないというのは何らかの原因があります。自分の経験からは、このタイプの子は飛躍的に学力を上げていくチャンスを秘めています。

 なぜ、算数の結果が出てこないのかについて考えてみます。まずは、算数が嫌いであるということ。ただし、嫌いといってもそこには原因があるはずです。その原因の一番のものは、やはりテストで結果が出ないということでしょう。どうしても、結果が求められる受験勉強の中ではやむをえない部分ではありますが、算数が苦手な子に即効性のある結果を求めても厳しいでしょう。一夜漬けでカリキュラムテストの結果を出したとしても、それを継続して行ったところで、模試のような試験範囲のないテストでは効果が出ないこともしばしばです。

 こういうタイプの子には、目の前のテストなど目標を下げてあげて、それを継続させていくことで、目標達成していくことの大切さを感じてもらうこと、そして是非算数が好きな子にしていきたいものだと思います。

 もう一つはクラスの適正化です。現行の集団塾では、4科目総合の偏差値でクラス分けしているケースがほとんどでしょう。文系科目で稼いで上位クラスにいる子の場合、算数の授業が難しくてオーバーワークになっているケースがあります。ぜひ、クラス分けは算数を中心に考えてください。小さなプライドがさらに算数の悪化を招くケースを何度も見てきています。塾にクラスダウンを直訴してもいいでしょう。得意科目と偏差10以上離されていたら即判断すべきです。授業が分かると子どもの顔にも笑顔が戻るはずです。


(4)算数苦手で他も苦手……

 男子、女子関わらず、まだまだ力が出し切れていないと感じる子は5年生段階では多いものです。5年生の親御さんとの面談の中でも、どこにやる気スイッチがあるのかという話題も多くなりました。算数に限って言うと、解らない・難しい・面倒くさい……、この後ろ向き発言が、本人のやる気を阻害していることが多いと感じます。特に男子にはその傾向が強いでしょう。逆に言えば、その部分を減らしていければ改善されていきます。勉強面で、前向きにさせることがこのタイプの子には求められます。

 解らない・難しいを克服するためには、問題をよくばらないこと、ある程度解けるようになったところで、難しい問題もと考えると、うまくいかないことが多いのです。テストでも、まずは取るべき問題をしっかり取れていればOKというスタンスで臨むといいでしょう。

 面倒くさい……は、あまり勉強の時間など型にはめない事も大切です。計算や漢字は、毎日やったほうがいいのは間違いありません。このタイプの子はそこを、しっかりやれていないから結果が出せないのです。それを無理矢理押し付けていくと、子どもの反発との戦いに明け暮れて、結局何も変わらないということになります。

 中学受験では二つのベクトルを追いかけてはいけないと私は思っています。一つのベクトルは成績を上げる。もう一つは生活面です。親御さんはわが子に対してはついついサディスティクになる傾向が強く、成績がいい子は生活態度もよいのではないかという幻想を持っています。

 結論からいうとそんなことはまったくありません。整理整頓が出来ていなくっていいじゃないですか。字が汚くてもいいんです。朝が起きられなくても小学校には休まず行っていれば朝型です。塾では子どもの性格は変えられません。そこを追いかけていくと遠回りになります。ひとまず毎日の計算が形だけでも一週間で終わっていれば合格にしてあげましょう。

 厳寒の原因「速さ」「比」「相似」の各単元別に克服ポイントを見ていきます

※算数についても何人かの友人に執筆をお願いした都合上有料記事にさせてください。