ジョイントする舟木一夫と神野美伽

―3月21日発売の「歌の手帖」5月号で特別対談―

 

京都「佐野藤右衛門邸」:“桜守”が育んだ銘木たち ーnippon.comより

 

 本題に入る前に―。私は桜の季節になると、佐野藤右衛門(さの・とうえもん)さんを想います。今の藤右衛門さんは京都生まれの第16代で95歳です。造園家、作庭家として日本全国の桜の保存活動も続け「桜守」として知られています。「桜のいのち庭のこころ」「桜守のはなし」などの著書もあります。藤右衛門さんは姥桜(うばざくら)が最高だと言います。桜の幹は長い年月を経て朽ちてしわくちゃになりますが、わずかに残った枝に花を咲かせます。その花が“色気”から“色香”に変わる。色気は誰にでも出せるが、色香はなかなか出せない。色香が感じられる桜が「ほんまにええ」とおっしゃいます。歌い手にも通じる話だと思います。

 

 

 

 

 本題に入ります―。皆さまご案内の通り、舟木一夫さんは2024年5月2日(木)から8日(水)まで、大阪・新歌舞伎座で「舟木一夫&神野美伽ジョイントコンサート」を開きます。2日は16時開演、5日は休演、その他の日はいずれも13時半開演です。当初、舟木さんと神野さんのジョイントと聞いてピンときた方は少ないと思います。舟友さんの中にも首を傾げた方がおられるのではないでしょうか。

 

 私はこの話は舟木さんサイドから新歌舞伎座と神野さんサイドに持ち掛けたものだということを伺っていましたが、詳細は存じ上げませんでした。発表前に“伏線”はありました。神野さんは2023年3月27日(月)から29日(水)まで東京・新橋演舞場で行われた「舟木一夫シアターコンサート」の最終日に舟木さんに招待され、終演後に舟木さんの楽屋を訪ねています。

 

2023年3月29日、新橋演舞場前での神野美伽さん

 

 神野さんは翌日のご自身のブログに「久しぶりに舟木さんの生の歌声を聴かせていただき、その変わらぬ姿に驚く気持ちと感激を抑えることができませんでした。昨年60周年を迎えられ、78歳になられた今日もバリバリの現役でシアターコンサート、ホールコンサートをなさっている舟木さん。プロの姿を観させていただきました」と綴りました。

 

 そして、楽屋では「本当に嬉しい心に響く言葉を沢山いただきました。長い長い時間が過ぎて、まためぐり逢えたような気持ちでおります。今日はとても嬉しい幸せな日でした」と記しています。しかし、翌年5月に2人でジョイントコンサートをする話には一切触れていませんでした。私はお二人の関係を全く存じ上げませんでしたので、元新聞記者のクセで調査を始めることになりました。

 

 

 1965年8月30日、大阪府貝塚市出身の神野さんは11歳の1977年、テレビ東京系の「東西チビッコ歌まね大賞」に出演し、都はるみさんの「アンコ椿は恋の花」を熱唱して芸映にスカウトされ、高校卒業後に作曲家・市川昭介さんの門下生になり、1984年3月10日に「カモメお前なら/北海ながれ舟」(A面作詞・鳥井実、B面・やしろよう)でキングレコードからデビュー。同年には各賞で新人賞を受賞しました。

 

【EP レコード シングル】 神野美伽 ■ カモメお前なら ■ 北海ながれ船■ 市川昭介 鳥井実 池多孝春 やしろよう

 

 1985年3月7日放送のTBS系「ザ・ベストテン」(司会は黒柳徹子&久米宏)のスポットライトコーナーに出演して3作目の「男船」(作詞・やしろよう、作曲・市川昭介)を歌ったのがきっかけで70万枚を超える大ヒットとなり、1987年の第38回NHK紅白歌合戦に初出場して「浪花そだち」(作詞・たかたかし、作曲・市川昭介)を熱唱。その後も日本レコード大賞、全日本有線大賞など各賞レースで数々の受賞歴があります。  

 

神野美伽「男船/花哀歌」【EP】

 

神野美伽「浪花そだち/望郷みなと」【EP】

 

 舟木さんと神野さんが初めて会ったのは1991年8月に新歌舞伎座で行われた神野さんの初舞台のコンサート「演歌の祭典’91夏~神野美伽スペシャル」でした。祭典は8月11日から18日までで、11日から16日までが舟木さん、17日と18日が美川憲一さんがゲスト出演しました。神野さんにとっては初舞台でしたから、新歌舞伎座サイドが舟木さんと美川さんに“助っ人”出演を依頼したようです。

 

(初代)新歌舞伎座1958年~2009年 Wikipediaより
 

 当時、舟木さんは“寒い時代”の最中の46歳、神野さんはテビュー7年目の25歳。舟木さんは1989年6月にアイエスの伊藤喜久雄社長(当時)を訪ね「おカネの匂いがしない」と言われ、“逆ダイエット作戦”などを行って1991年6月に再度伊藤社長を訪ねて「おカネの匂いがしてきましたよ」と言われた直後でした。舟木さんにとっては、神野さんの“助っ人”を買って出たものの、まだ完全な状態ではありませんでした。

 

 舟木さんは簡単に引き受けたものの、コンサートでは神野さんの“助っ人”にならないばかりか歌に“切れ”がなくて足を引っ張ってしまったと後悔し、その後は毎年のように「1991年に戻ってやり直したい」と思い続け、昨年、新歌舞伎座と神野さんサイドに持ち掛けたようです。一般人には考えにくいことですが、責任感の強い舟木さんらしい振る舞いだと思います。

 

 今年3月5日(火)に「乙女のブログ」に寄せられた舟友さんの話によると―。 当時、新歌舞伎座には母親と二人で行きました。神野さんの初舞台のお芝居は「女三四郎母恋しぐれ」で共演はあき竹城さんとコロッケさんら。コンサートでは、舟木さんがヒット曲を7曲ぐらい歌われましたが、「助っ人になってましたよ~~」と仰っています。舟木さんの想いとは違って、お客さんにはそのように映っていたんですね。

 

 

 そして、神野さんは2024年1月26日(金)に舟木さんとジョイントコンサートの打ち合わせを行いました。神野さんが1月27日(土)付のご自身のオフィシャルブログで「舟木一夫さんと」と題して“報告”するとともに、お二人のツーショット写真を公表しています。詳しい中身の話は分かりませんが、以下に神野さんの“報告”を掲載させていただきます。

 

 

 

 昨日は、5月2日〜8日まで大阪新歌舞伎座で行います舟木一夫さんとのジョイントコンサートの打ち合わせと取材のため舟木先輩とじつに沢山のお話をすることが出来ました。ストレートで分かりやすく、心に響く嘘のない言葉。私の初劇場公演の舞台を助けていただいたその日から早33年。同じ、大阪新歌舞伎座の舞台にまたこうして舟木先輩と立たせていただける巡り合わせは、決してたまたまや偶然などではないと感じて居ります。あったかい心地良さをお客様にも味わっていただけるコンサートになることが見えて来ました。5月の舞台が待ち遠しいです。

 

 異色の組み合わせですが、お二人の構成・企画力で面白い舞台になると思います。舟木さんと神野さんは3月21日(木)発売の月刊「歌の手帖」5月号でカラー6ページにわたって5月の新歌舞伎座でのコンサートについての特別対談を行っています。私はこれからすぐに買いに出かけます。皆さまにも是非手に取ってお読みいただければと思います。ちなみに、巻頭インタビューに登場する花園直道さんは、かつて私が夕刊フジのぴいぷる欄でインタビューさせていただいた方です。合わせてお読みいただければ幸いです。

 

 

 

  

追 加

 

   3月22日(木)に武蔵野舟木組のブログにアップされた内容に驚きました。舟木さんと神野さんは1966年にも地方公演で“ジョイント”されているということです。映像付きで紹介されていますから、是非ご覧になってください。

 

 

お詫び

 

 「2024年コンサート曲⑰」の原稿の中に船村徹さん作曲の舟木さんのシングル曲を表にして掲載しましたが、最も大切な曲である「夕笛」を外しておりました。コメント欄でご指摘を受け、早速、表などを直しました。ご指摘いただいた方には御礼申し上げますとともに、皆さまには大変申し訳ありませんでした。akira

 

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☆青春賛歌 目次【1】2022年6月~

☆青春賛歌 目次【2】2023年1月~

☆青春賛歌目次【3】2024年1月~