第1幕
快活な金管のファンファーレ風の前奏曲の後に幕があがる。春の午後、田舎のトゥルーラブ家。恋人どうしのアン、トム、およびアンの父のトゥルーラブが三重唱を歌う。トゥルーラブはトムのために職を世話しようとするが、トムは堅実な仕事を馬鹿にする(アリア)。そこへニック・シャドウが現れて、トムの叔父が死に、遺言によって大金がトムにころがりこんだことを伝え、喜びの四重唱に発展する。トムとニックは手続きのためにロンドンへ行くことになる。トムとアンは二重唱を歌い、別れを惜しむ。トムは、手続きが完了したらアンとトゥルーラブをロンドンに呼び寄せると歌い、ふたたび三重唱に発展する(以上第1場)。
ロンドン、マザー・グースの売春宿で、トム、ニック、マザー・グースが酒を飲む。美・楽しみ・愛とは何かを聞かれ、トムは最初の2つに答えるが、愛については答えることができない。カッコウ時計が1時を伝え、トムはそれを口実に帰ろうとするが、ニックは12時に戻してみせ、時間はトムの思いのままだと伝える。トムは愛について悲しく歌い(カヴァティーナ)、マザー・グースはトムと寝る(以上第2場)。
夜、再びトゥルーラブ家。トムからの音沙汰がないのでアンは心配し、トムを助けるためにひとりでロンドンへ行こうとする(アリア)。家の中から父の声が聞こえ、アンはためらうが、決然としてトムのもとへ向かう(ハイCで終わる有名なカバレッタ)(以上第3場)。
第2幕
ロンドンのトムの家。アリアを歌うトムは都会の堕落した生活に倦み、幸福を求める。ニックがやってきて、幸福になるために人は自由でなければならないといい、感情や良心から離れて自由な意志を通すために、醜女として有名なトルコ人ババとの結婚を勧める。トムとニックは二重唱を歌う(以上第1場)。
アンはトムの家の前までやってくる。そこは婚礼の行列の場で、トムが輿に乗ってやってくる。トムはアンに去るように言い、口論になるが、そこへ輿のかげからババが顔を見せ、トムはアンに妻だと紹介する(三重唱)。アンは走り去り、トムとババの婚礼がはじまる。ババがヴェールをぬぐと立派なヒゲが生えていた(以上第2場)。
ババはえんえんとしゃべりつづけ、トムは結婚を後悔する。ババは怒ってアリアを歌いながら物を投げる。トムはババをだまらせるためにかつらで顔をふさぐと、ババは動かなくなる。トムが眠りについたところへニックがやってくる。眠りからさめたトムは石をパンに変える機械の夢を見たことを語る。ニックはトムが夢に見たとおりの機械を見せ、トムは大喜びする。二重唱の後、ニックはトムに機械の大量生産の必要性を説く(以上第3場)。
第3幕
トムは破産し、借金取りから逃げるために雲隠れした。トムの家財は競売に出されるが、その中には2幕で静止したままのババもまじっている。競売人のセレムが熱中のあまりババの顔の上のかつらを握りしめると、ババが動きはじめ、2幕で中断した歌の続きを歌うが、自分が捨てられたことを知る。トムを探してやってきたアンをババは力づける。舞台の外でトムとニックの声が聞こえ、アンは彼らを追って去る(以上第1場)。
夜、墓地。ニックはトムに対して、1年間仕えた報酬として命を支払うように要求する。12時の鐘がなったら命を取るというが、9つなったところでニックは鐘を止め、それからトランプをカットし、トムが何のカードを3回当てることができたら命を取らないでやろうと言う。トムは遠くでアンが歌っているのに気づいて勇気づけられ、勝負に勝つ。ニックは地下に沈むが、その前にトムが発狂するように呪う。トムは自分をアドーニスと思いこむ(以上第2場)。
ベドラムの精神病院。トムはビーナスが自分を訪れることを待ちのぞむ。病院の管理人に連れられてアンがトムに会いに来る。トムはアンをビーナスと思い、愛の二重唱を歌う。トムは疲れを見せ、アンはトムの願いに答えて子守唄でトムを眠らせる。トゥルーラブがアンを呼び、アンは眠るトムに別れを告げて去る。目ざめたトムはアンがいないことに気づき、ビーナスが盗まれたと思いこんで、心痛からそのまま息絶える。合唱が弔いの歌を歌う(以上第3場)。
幕が降りた後、主な登場人物5人がその前に現れ、怠け者の心に悪魔はつけこむというこの話の教訓を歌う(以上エピローグ)。