福島市の西部は、比較的、線量は低いエリアだと聞いていた。
ただ、店主によれば、飯坂温泉は山のふもとということもあり、若干、高めに出ているとのことだった。
「川向こうの東側は低くて0.2ぐらいですが、西側は0.8程度出ているところもあります。ウチの庭の土は1.0あって、子供には触らせないようにしています」
(単位はμSv/h
2012年8月の話です)
前にも貼ったが飯坂温泉の放射線量はこんな感じである。ちょっとわかりにくいが、昨年と今年の2年間の線量が掲載されている。
http://www.city.fukushima.fukushima.jp/uploaded/attachment/10855.pdf場所によって数値がバラバラだが、以前、GCMで郡山に行って測定会に参加したときも、たった5m歩いただけで数値が大きく変動していた。やはり放射線量は不確定なものなのだ。そのGCMの時も書いたが、仮に0.8あったとしてもそこに人が24時間いるわけでもない。一日の半分、いやもっとそれ以上の時間を室内で過ごす人の方が多いのではないだろうか。ましてや短期滞在の旅人にどれだけの影響があるというのか。
ただ、そうは言っても、簡単に聞き入れてもらえない人がいるのもよくわかる。科学的な妥当性を説いたところで、その手の人には通じない。おそらく心の闇の部分に触れるような覚悟がなければ、お互いに理解できない存在のままになるのではないだろうか。密度の濃い関係性の人間ならともかく、不特定多数の闇に踏む込むことなんて、人には簡単にではできない。だから、この問題は難しい。
「除染は進んでいるのですか?」
横にいた嫁さんが質問した。そういえば、そうだ。ニュースでは除染の様子がたびたび報道されている。
「旧福島市内は進んでいますが、この辺りはねぇ・・」
(これも2012年8月の話です)外から人が来る場所だから飯坂は真っ先に除染するのだろうと思っていたが、よく考えれば住人が多いところの方が先というのは自然だ。都会と田舎の構図は、田舎の福島市の中にも存在するのだろう。
食に関する話も伺った。住民同士の心の揺れよくわかる話だった。
「近所の農家が人に農作物をあげていいのかどうか、わからなくなっています。もらう方も、もらっていいのか、悪いのか判断できなくなっている。どう判断すればいいのかがわからない怖さがあります」
個人的には検査をしたものだから自信を持って外に出すし、食べるという人をたくさん知っている。2012年夏の時点で、だ。これに関しては、あくまでも店主の身近な場面での話だろう。
だが、疑心暗鬼になるのもわかる。程度の差はあれど、誰もが食に対する怖さを感じていたのは事実だ。かく言う自分もそうだった。震災直後、ある福島市北部の農家の農作物を購入した。様々な角度から調べてリスクはほぼないと考えたが、それでもなお、果たして食べていいものかどうかという疑念がなかったわけではない。次第に多くの妥当性の高い情報が出回り、検査等の多くの取り組みがなされることで疑念は払拭されていった。一方で異なる情報にアクセスして避ける選択をした人もいるだろう。が、店主のように何を判断基準にすればいいのかがわからなくなってしまった人が多数派の気もする。これは1年前の話だけども、今も迷う層はわりといる気がするが、どうだろう。
さて、「避ける」という気持ちは食ばかりではなく、人に向かうこともある。
前にブログでこんなことを書いた。
■福島県民と差別
http://ameblo.jp/akio-s/entry-10890887407.html
車のフロントガラスが割られたとか、来店拒否だとか、そういう話を聞いて頭に血が上って書いてしまったが、TDL広報に話を聞いたりしたのを経て、噂に尾ひれがついた部分が多々あるのだろうと思うようになっていた。
けれども、以下のリンクのような話もあり、単なる噂だけじゃなかったというのが今になってわかる。
■福島のソーラーのらやさん(とその周囲)が受けた差別
http://togetter.com/li/474017
店主はそういうあからさまな態度を取られたことはなかったが、差別の話に及んだ時、ふと漏らす。
「西日本のある場所に行ったとき、『福島から来たんですよ』といったら、さっと身を引いた人がいました。人にそういう気持ちが存在するということは、とてもよくわかります」
2年経った今、そこまでする人はいるだろうか。おそらく日常の中ではほとんど存在しないと思われる。けれども、小さな棘のような否定の感情が、ふとしたきっかけで爆発するということは、日常生活の中でもよくあることだ。人はどう福島のことを考えているのだろうか。
店の経営は厳しいという。東電の補償で何とかなっているが、山のような提出書類の処理に辟易としている。住民としても放射線への不安もある。外からあれこれ言われたり、変な態度を取られるのも嫌だ。一体、いつになったらこの状況は改善するのだろう。
「そういうことに対して口を開きたなくなりました。『言えない』のではないんです。『言いたくない』んです」
初めて会った俺たち家族に、店主はそんな言葉も漏らしてくれた。かなり溜まっているものがあるのだろう。元気づける意味でも東京の状況も伝えた。福島産が徐々に増えていること、心無い言葉をかける人間など皆無に等しいこと。少しは安心してもらえただろうか。
俺が「難しいですね」と言うと、
店主は「ホント、難しいです」
途中で交わしたその会話が今も強く頭に残っている。
2012年の夏の話であった。
辛気臭い話になったので、最後に一つ。
福島駅前のコラッセ福島「だったと思う)で見かけた福島三姉妹。
自衛隊の萌化が止まらんw
![$正直、スマンカッタ!-福島三姉妹](https://stat.ameba.jp/user_images/20130404/19/akio-s/ac/68/j/t02200293_0800106712487726579.jpg?caw=800)
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fwww22.a8.net%2Fsvt%2Fbgt%3Faid%3D130407617810%26wid%3D001%26eno%3D01%26mid%3Ds00000007448004007000%26mc%3D1)
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fwww15.a8.net%2F0.gif%3Fa8mat%3D25N35T%2BDE94S2%2B1LGW%2BNUU7L)