福島県民と差別 | 正直、スマンカッタ!

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フリーランスライターSATOの仕事&プラペの記録。

地震発生以来、自分自身、ツイートなどでよく「差別」について言及してきた。結構早い段階で言及していたので、何を大げさな、との印象を持った人もいるかもしれない。しかし、原発事故が起きてこの後の福島県民がどうなっていくのかと考えたとき、「汚れた土地に住む、汚れた人間」のような扱いをされるのは間違いないだろうと思った。その結果として、差別されると危険性が真っ先に心に浮かんだのだ。



そこまで想像するに至る根拠はいろいろとあるが、以前、政府系の人権擁護機関の仕事をしていた経験が大きい。女性や子ども、ハンセン病、HIV/エイズ、同和問題、在日外国人問題など多様な人権問題を見ていく中で、差別が発生する構図、差別を受けて苦しみ抜いてきた人の体験談、発生した後の取り組みなどについてレポートしてきた。


今回の原発事故はある問題のパターンと似ている。いわゆる水俣病問題である。それに気づいたから、差別というキーワードでいろいろと情報を探ってみた。すると、ほどなくして、残念ながら福島県民に対する差別問題のニュースが流れるようになった。自分が最初に目にしたのは、福島民報のコラム「あぶくま抄」で見つけた記事である。


>東京の知人宅に身を寄せた同市の主婦は、電車内で若い女性の会話を聞いて凍り付いた。

「被ばく者に触れたら嫌だよね」「福島から来た人は分かるようにゼッケンを着けてほしいよね」。

>いわき市から長野県に避難した家族は旅館の宿泊を断られた。

http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4127&mode=0&classId=2&blockId=9813597&newsMode=article



実家の母から記事の存在を聞いたのだが、怒りに震えていた。地元ラジオ局のDJは、この話を聞いて「ゼッケンつけて東京を歩いてやる」と、怒りの声明を発表したそうだ。



●福島県出身だから結婚が破談になった。
●県外のラーメン店に言ったら、1000円払うから帰れと言われた。
●ガソリンスタンドで福島ナンバーが給油を拒否された

こういう話を聞いて、デマだと決めつける人も少なくない。もちろん、中には尾ひれはひれが付いているものもあるだろう。しかし、嘘だと言われて耳を傾けてもらえず、結果として差別が悪化した例もいくつもある。(いじめはその典型的な例だ。言っておくが、いじめはれっきとした差別である)


もちろん、自分自身、にわかに信じることはできなかった。しかし、会津若松に帰省した時に、友人の口から生々しい話を耳にして愕然としてしまった。ディズニーランドに車で行って、車にマジックで「福島に帰れ」と書かれた家族。山形でフロントガラスとリアガラスを割られた家族。そういう悲しい思いをした方たちが、実際に彼らの周りにいるという。

無論、彼らも心ない人間ばかりが、世の中にいるわけではないことはわかっている、しかし、福島の外に出ることはできないという。


「福島ナンバーで他県を走ると、道行く人がハッと振り返る。それだけでも肩身が狭くなり、ますます、何もできなくなる」


異質な者を見る目は、差別に繋がっていく。今後、原発問題が長期化していくことが予想される。今はごく一部の心ない人間が行っていることでも、時間が経てば、確実に差別問題は深刻化していくだろう。現にいま、福島から逃げない人間や、福島の食材を食べようとしている人間に対して、「愚かだ」との論調が見受けられる。そうした無理解は、間違いなく、人の尊厳を傷つける。


恨むなら東電を恨めだって? そういう言い方が、福島県民の傷を深く抉るのがわからないのだろうか?だって、差別するのは東電ではなくて、目の前にいる人間なのだから。


次回はその辺の話を掘り下げて考えてみたい。


他にも噂レベルではあるが、いろいろな話を聞いている。