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家具 通販 赤や 竹田のブログ

家具 通販 赤やで働く竹田のブログです。仕事の事や家具のこと、個人的なしょーもないことまで日々綴っていきたいと思います。

若竹七海さんの「クール・キャンデー」を読みました。
帯を見て知ったのですが、最近映像化されたようですね。


クール・キャンデー 若竹七海

あらすじ
「兄貴は無実だ。あたしが証明してやる!」誕生日と夏休みの初日を明日に控え、胸弾ませていた中学生の渚。だが、愉しみは儚く消えた。ストーカーに襲われ重態だった兄嫁が他界し、さらに、同時刻にそのストーカーも変死したのだ。しかも、警察は動機充分の兄良輔を殺人犯として疑っている!はたして兄のアリバイは?渚は人生最悪のシーズンを乗り切れるか。
「BOOK」データベースより

若竹七海さんは好きな作家さんなのですが、この作品は読んでいなかった。
厚くもない文庫の上、終始中学生の主人公の口語体で書かれた文章だったのであっという間に読了。

若竹さんが描くいつもの「葉崎市」が舞台。
主人公が中学生の女の子ということもあり、人が二人も死ぬのにかなりライトなノリ。
自販機の前でたむろするチャリに乗った中学生達の描写など、爽やかで懐かしい感じがすごく良い。
幼馴染の中学生など子供達みんなにちょっと個性がないようにも感じたが、
こういう学生が繰り広げる甘酸っぱい雰囲気の青春ミステリは嫌いじゃない。

しかし著書のミステリはやっぱり普通の青春ミステリじゃなかった。
この短い物語の中に巧妙に種と仕掛けをばら蒔いて、最後にザックリ刈り取られた感じ。
辻村深月さんの「凍りのくじら」を読みました。


凍りのくじら 辻村深月

あらすじ
藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき―。
「BOOK」データベースより

自分にとっては辻村作品2作目。
あとがきで瀬名秀明さんが「主人公の理帆子は読者の共感を得られるタイプではない」
と書いているが、自分は読んでいて主人公に共感できないというより、
主人公の理帆子の描き方にちょっと違和感を感じた。

前半は本当に読みづらかった。
物事を達観し自分を他の人間と違う頭の良い人間であるという自意識過剰な主人公であるが、
作中から離れて見れば全然特別ではないちょっと痛い女子高生だし、周りの人間よりも愚かで不完全な部分がたくさんある。
しかし、物語のキーマンであり理帆子の良き理解者でもある別所あきらが「頭の良い人って孤独だ」と理帆子を評したりするところからも、全編を通じて「こういうそれなりの容姿と人より秀でた頭の良さを持った女の子って、実は居場所がなく孤独で不幸なのよねー」という、主人公の自意識過剰な部分を肯定するような作者の主張がそこかしこにあって、なんだかなーとちょっと萎えた。

しかし人物描写にちょっと引いたものの、藤子・F・不二雄のSFを題材にして進んでいく物語は非常に上手で読んでいて親しみ深く、ドラえもんの道具の名前が登場する度に漫画のコマが脳内再生されとても懐かしく思えた。
ドラえもんの中でも自分が好きな回である「天の川鉄道の乗車券」や「どくさいスイッチ」のエピソードが出てきて嬉しかった。
主人公の理帆子はドラえもんの映画は「海底鬼岩城」が一番好きと作中で言っているが、きっとこれも著者の投影なのだろう。自分は「鉄人兵団」か「宇宙小戦争」のどちらかだなぁ。

内容も前半部分が読みづらかったものの、後半になると死期が迫る母と子の情愛や夫婦の絆などに焦点を当てたエピソードに単純に心が打たれ感動できた。
ラストの暴走した元カレとの対決シーンからの展開も、話に引きこまれて読むのを止められなくて一気に読んでしまった。
すごく印象的で記憶に残る文章や、ハッとさせられるようなリアルな心理描写などもあり、すごく筆力のある作家さんなんだと実感。
すごく女性目線な描写がちょっと引っかかるが、もう何冊か読んでみよう。
原田マハさんの「楽園のカンヴァス」を読みました。


楽園のカンヴァス 原田 マハ

あらすじ
ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは七日間―。ピカソとルソー。二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。
「BOOK」データベースより

巷で話題のこの本を読もうと思い手に取るも、
自分はこの小説のテーマとなる美術方面にまったくといっていいほど無教養。
楽しく読めるか不安に思いながら、最初の二章ぐらいまで読むと一気に物語に引きこまれた。
「ダヴィンチコード」を読んだ時のような興奮があった。
絵画や美術に疎い私でもその業界の事や作品について非常に解りやすく丁寧に書かれており、
美術に知識がない人間にも十分楽しめる。
作中の本当に絵画が好きな人たちの情熱がこちらにも伝わり、読んでいて非常に清々しい。

ミステリというカテゴリに属する小説だとは思うが、
同じ絵画を愛するもの同士の純粋な恋愛小説でもある。
スキンシップも愛のセリフもないのに絵画と古書を通してだんだんと心を通わす主役二人の描写が美しい。

物語の一番の山場と想定していた絵画の真贋を見極める講評会。
お互いの持てる知識と洞察力を存分に発揮するような、
法廷サスペンス的なものを期待していたが、
びっくりするほどあっさりしすぎでこの点がちょっと拍子抜け。
ミステリ小説としては謎解き部分も若干弱い印象も拭えないが、
著者の描く作中の人物達の絵画に対する情熱や愛情で、
読後は余韻のある高尚な気持ちに浸れた。

絵画に疎い私はこの本を読んでいる最中はスマホを片手に作中に絵が登場する度に画像検索し、
実在の人物が現れる度にWikipediaを見るというスタイルで読破。
今まで親しみがなかった絵画を身近に感じることができたし、非常に勉強にもなった。