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家具 通販 赤や 竹田のブログ

家具 通販 赤やで働く竹田のブログです。仕事の事や家具のこと、個人的なしょーもないことまで日々綴っていきたいと思います。

貫井徳郎さんの「微笑む人」を読みました。


微笑む人 貫井徳郎

あらすじ
エリート銀行員の仁藤俊実が、意外な理由で妻子を殺害、逮捕・拘留された安治川事件。犯人の仁藤は世間を騒がせ、ワイドショーでも連日報道された。この事件に興味をもった小説家の「私」は、ノンフィクションとしてまとめるべく関係者の取材を始める。周辺の人物は一様に「仁藤はいい人」と語るが、一方で冷酷な一面もあるようだ。さらに、仁藤の元同僚、大学の同級生らが不審な死を遂げていることが判明し……。仁藤は本当に殺人を犯しているのか、そしてその理由とは!? 貫井氏が「ぼくのミステリーの最高到達点」と語る傑作。読者を待つのは、予想しえない戦慄のラスト。

妻子を殺した仁藤俊実が犯人というのは冒頭から判明している。
なぜ殺したたか?というホワイダニットの動機部分に焦点を当てて、主人公の作家が取材するノンフィクションの文体で進んでいくフィクション。
色々な人の証言による過去の仁藤のエピソードでどんどん不穏な空気になっていく。
証言する人の主観も入り混じりなかなか真実にはたどり着かない。
一体真実はなんなのか?と興味津々で読み進めると、作中の登場人物の言葉が。
「最終的に理解できる結末が必ずあるのなんて、フィクションの中だけですよ。」と。
これはミステリを読んでいる読者に向けた痛烈な皮肉だろうか。
実際この作品を書いている一人称の「私」も結局わかりやすいものを求め、真実には至らなかった。
もやもや感が半端無いが、なにかすごい小説を読んだ気もする。
長崎 尚志さんの「闇の伴走者 醍醐真司の猟奇事件ファイル」を読みました


闇の伴走者 醍醐真司の猟奇事件ファイル 長崎 尚志

あらすじ
漫画界の巨匠が遺した未発表原稿。発見された50枚の原稿には、若い女性を誘拐・監禁し、苦悶する姿をデッサンして殺害する“漫画家”なる人物が描かれ、さらには、作中の被害者の顔は、35年前の連続女性失踪事件で消えた女性に酷似していた。果たしてこれは巨匠本人が描いたものなのか?別人だとすれば誰が、何のために?作者は現実に女性を次々に誘拐し殺した犯人なのか―原稿に遺された痕跡が新たな猟奇事件を招き、驚くべき犯人像が浮かび上がるが…。二転三転から、ありえない結末へ。伝説的名作『MASTERキートン』原作者の一人。漫画界のカリスマだからこそ書けた驚愕のミステリー長編。
「BOOK」データベースより

漫画業界のよもや話が面白い。著者の漫画編集者ならではのさまざまな漫画の薀蓄や、
漫画家やアシスタント出版社に対する見解や思いが詰まっていて、職業小説としても魅力的。
いたるところに漫画に対する愛情と漫画家に対するリスペクト、編集者という複雑な職種の難しさなどが描かれていて非常に興味深い。
主人公の一人である醍醐真司は容姿も性格もマンガのキャラクターのような人物造形で個性的で面白い。嫌味で自己顕示欲も強く常に何か食べているような太った男だが、嫌いになれない。

副題に「猟奇事件ファイル」とあるがエログロ描写はほとんどない。
そういう耐性のない人でも安心して読める。
物語の一番のキーである発見された50枚の漫画の原稿。これは是非その実物を読みたい。
この原稿に全ての謎があるわけだが、醍醐が着目するこの原稿の中の技法や構成など、実際にその漫画そのものを見ながら解説を読みたかった。浦沢直樹に描いてもらったりできないものか。

この漫画を元に話が二転三転する展開はミステリとして非常に面白く、
さすがあの「MASTERキートン」を手掛けた編集者と思わせるシナリオだった。
ただ醍醐以外の登場人物がヒロインも犯人もなんだが没個性的でちょっと薄くて印象に残らなかった。
この副題からしてシリーズものになるのだろうか?
続編が出るなら読みたい。
辻村深月さんの「オーダーメイド殺人クラブ」を読みました。


オーダーメイド殺人クラブ 辻村深月

あらすじ
中学二年生の四月、小林アンは突然友人たちから無視される。同級生の昆虫系(イケてないキャラ物男子)、徳川の言葉をきっかけに仲直りするが、「リア充」の、クラス内ヒエラルキー上位の女子グループの“世界の狭さ”に違和感をおぼえる。
実は、死の香りがする「退廃的な美」に強く惹かれ、独自の世界観に誇りを持っているアン。美術部の徳川が書いた絵「魔界の晩餐」にも強く惹かれていた。ある日、その徳川が河原で動物をふみ殺しているような現場を遠くから目撃。気になったアンは徳川に近づき、話をするうちに、お互いの中に共通するセンスを感じる。
母親の無理解、友人たちとの関係に、絶望にも似た閉塞感を抱くアンは、自分の美意識を理解できるのは徳川しかいないと確信、ついには「自分を殺してほしい」と依頼する。
普通の中学二年生とは違う、「特別な存在」となるために、今までになく斬新な、人々の記憶に残る殺人事件を計画するふたり。クラス内階級を超えて密かに相談を繰り返す。
アンと徳川の不思議な関係の行方は、そして二人で作る事件の結末とは…。
<公式サイトのあらすじより>


辻村深月さんの作品を続けて読んで、これが3冊目。
既に読んだ2作品でこの人の描く主人公は厨二すぎてイタイという印象だったが、
今回の主人公はそのままの中学二年生の女の子。
いつもの人物描写とそれほど変わった印象はないのだが、
中2という思春期の子供だけに今までと違って全然イタイ感じは受けない。
自分は特別と意識したり、人間関係に悩んだり、厨二病全開なのがピッタリ当てはまり、すんなり好意的に受け入れられた。
中学生の時に感じる説明できない閉塞感や、この時期の女子の不安定な心理描写が見事に描かれている。
この年齢の時に主人公のアンや徳川が退廃的な美に惹かれるのも理解もできる。
「リア充」「厨二」などのネットスラングもサラリと使用されているが全然違和感がない。
頻繁に登場するクラス内のヒエラルキーという単語にもあるように、
中学時代の暗黙のカースト制を「昆虫系」などの名称で分類して描写する表現も秀逸。
当たり前のように主人公のアンも徳川もそれぞれが身分が違うという意識しているところも、
この時期の子供の差別的で残酷な思考回路を端的に表していて感心した。

運命共同体となった後の二人のそれぞれの意識の変化の描き方も素晴らしく、
物語の着地点がどうなるのか、を興味が惹かれあっという間に読了。
これしかないという美しい終わり方に感嘆した。

3冊読んだ辻村さんの作品の中では群を抜いてこれが一番好きだ。