仕事が変わり、名刺入れがゴチャついてきたので整理していると、音響の仕事でもらった名刺が出てきました。
とある病院の精神科医の先生の名刺です。
裏に私のメモで「音楽療法」と書いてあります。
記憶にあまり残っていなかったのですが、音楽療法学会で知り合ったとある精神科医であることに間違いないようです。
音響の仕事は医療学会、株主総会などもやっていました。一般人はまず聞くことのできない内容のものです。私達は何すればいいかというと、言ってしまえば拡声と記憶のみです。
音響さんは派手なライブやコンサート以外のもこうゆう拡声の原点回帰的業務も日々行います。
仕事の内容的には、セットさえしてしまえば、後は機材様に仕事を委ねるのみです。
「今日も壊れずお願いします。」
そんな暇な業務なゆえ、本番中は手があいてしまいます。
大概の人は寝ますが自分の場合、睡眠自体に日々悪を感じているので寝ることはありません。
学会を聞いたり、メモしたりします。
もちろん内容はさっぱりですが、用語さえ省けば医者がどうゆう研究をしていてどうゆう結果になるかというのはわかってきます。
脳死学会、外科学会、痴呆なんとか学会、大腸うんたら学会など等、学会自体もかなり細分化されているため専門性が高いのですが、内容を聞いていると、専門外の部位への影響などは、一般企業と同じなわけです。
要は「部署が違います」である。
専門性を高めるためにはしかたないのですが・・・。
で
とある精神科医です。
音楽療法学会
というのがあり、進んで仕事を請けたことがあったのですがその時の話です。
学会は一日に何人もの先生が発表し質疑しあいます。
その中には若い(30~40くらい)の先生もいて大概緊張しています。その分野の専門家のなかで演説するのですから、緊張するに違いありません。
音楽家が音楽家の中でライブするようなものでしょうか。
私はそのなかの音響ブースにいるわけですが、私はシステムを複雑(というよりはいろんな機材と使う)にする「癖」があり、ブースからはみ出すことが多々ありました。
はみ出すととても目立つわけです。
プロジェクターの明かりしかない会場で音響ブースは手元の明かりが漏れて目にはいるわけです。
そんなことをしていると発表まじかの先生方がいろいろ声をかけてくるわけです。「何時ですか?」「トイレはどこですか?」「なにしてるの?」などなど。
私が名刺をもらった先生もその中の一人でした。
クラシック音楽(モーツァルト)とpopミュージックの療法効果と差異の研究結果と進行状況について述べ終えたその先生は壇上から降りるとなぜか音響ブースにきてすぐ横に座ります。
「いやー終わったー」等と軽い感じで話しかけてくるので無視するわけにもいかず相づちをうちます。
このまま一日ここに座って他の先生の発表を聞くらしいのです。
確かに音響ブースは見えやすい位置に設置されることがおおく、その日も会場後方の落ち着いて見える位置に設置していました。
一人ごとなのか話かけているのかわからないのですが、たびたびこちらのほうを軽く向いてなにやら言っています。
正直厄介だなとおもっていました。
そんななか、ある先生の発表の映像で高い周波数が流れるビデオがありました。
「ニコライだね~」ととなりでつぶやく医師。
「カールステンニコライ
ですか?」と聞くと。
「そうだね~」
映像が切り替わり轟音へ
「メルツバウ
だね~、知ってる?」
「聴きはしないですが名前は・・・」
このへんの一部始終が自前のicレコーダーに録音されているのだが、とても学会とはおもえないくらい。
これじゃレコード屋の親父との会話だ。
ビデオの内容に異常な興味があったので隣にすわった先生に聞くと、どうやら患者は記憶障害で難聴なのである。
どちらもストレスによるもので難聴に至っては丁度一般的な男性の声の周波数のみ聞き取ることができないというもの。
超低音と高音域を認知できているというテスト結果の映像である。
へんな話ドヤバイ映像である。プロモになりえるものだ。
テストにニコライとメルツバウとは・・・。
ニコライの先生が終わるとその先生も音響ブースにきて横に座った先生に挨拶しまくっている。
どうやら私の横に座った先生は偉いようである。
「音響さんも興味持ってたよw」などと横にいる先生がニコライメルツバウ先生にいうとニコライメルツバウ先生がニヤニヤする。
もちろん私もニヤニヤする。
テストに変なの使うんですねーと感想を述べると、ニコライメルツバウ先生は極端なほうがいいからねーと笑う。
「なんかいいのない?」と先生が聞いてきたので、澤井妙冶
のライブに行って耳がピコピコと振動して恐怖さえしたことを伝える。
先生はとても興味をもってライブ情報を聞いてくるが、その時澤井妙冶はパリ在住である。
ライブがあったら連絡をくれと名刺を渡される。
質問あったらメールしてくれとも言ってくれた。
その後一度だけ先生が精神科医ということもあり、アウトサイダーアートについてメールしてみると、その先生の患者さんにはそうゆう才能のある人はいないよということだった。
ただ記憶障害者で面白い人がいて・・・・とスコット=ド・ワシュレー
という人を紹介された。
先日transfigureさんからスコット=ド・ワシュレーの展示会があることをメールで連絡いただき上記の話を思い出した次第なんです。
つながるっておもしろいもんですね。
どんな人かというと、スコット=ド・ワシュレーはもともとエンジニアで25歳のとき交通事故に合い脳に異常が残り記憶障害となりました。
記憶が1日しか持たない。
記憶障害ではよくあることですし、誰かが小説化しているもので近いものを見たこともあります。
彼は芸術家ではありません。
25歳までのエンジニアとしての能力をもつ記憶障害者です。
彼は日々記憶障害保管装置をつくります。彼にとっては自らの為の作品なわけですが、一日が経つとその装置の使い方や目的も記憶から消えていきます。
彼の姉がその作品群をナンバリングし、使用方法などをメモしているため、作品としてなりたっているのです。 今回のその作品群が展示されるとのことです。芸術としてとらえるのは残酷すぎる展示会でもありますね。 transfigureさん教えてくれてどうもです。