すべてが形になる前の予感がする。

訪問入浴。

/庭先の蚊の狼藉をいかにせん訪問入浴硝子戸の外

/風鐸や雨の季節に入りにき

/板書する硬骨の人青葉木菟(あおばずく)

/誰にでも最終講義生身魂墓所に苔むす両手を合わす

/夏帽やとほに七十歳(ななそとせ)過ぎにけり

/板敷の床冷えにけり走り梅雨

/毛蕊花の最初の花片落ちてより

/どんみりと楝(あうち)の空の雲近く

/水張田(みはりた)や雲映し込むクイナ鳴き

/草掻くや畝一本に小汗かな

/畝の草掻いて西向く左向く

/明易の朝カッコーの容赦なく

/出来合いの仕合わせネギマ解凍す

/墓石の蔭から伸びて立葵

/桃実る平和論者でありたいな

味噌汁を頂いて、ば様の今朝の一言───

おいしい。

のっ(呑っ)こむのがもったいないから舌の上で遊ばせる。

うれしい。

ありがとう。

 

倉石智證

蚊に喰われながら溝掃除から帰って来る。

ばーさんが洗濯物のを前に四苦八苦、

あーでもないこーでもないと腕がテーブルの上で交錯してゐる。

「どーかしましたか。なんだかうまく出来ないね」

「困るなあ、片方のアシがどっかへいっちゃった。足は気の毒だな」。

いや、そうじゃなくて、ばーさん、それはズボンじゃなくてシャツだよ。

「シャツだから探し物は腕だよ」。

ばーさんは畳みものをズボンだと思って盛んにアシを探していたわけだ。

するとばーさんは次に、

「そうだ、胴がどっかへいっちゃった」…。

結局掻き回すだけ掻き回して洗濯物のシャツの畳物は完成しないのでありました。

妻曰く、

「むかしは本当に洗濯物を畳むのが上手だった。」

「わたしが変な風にだらしなく畳むとよく突っ返されたものだったわ」。

往時茫々である。

 

倉石智證

梅雨の間や───

/母の日の花のブーケに庭の花

/淡竹詠むはちくの不思議梅雨の間や

/小菊小菊地べたに頸を投げ出して

/一しずく飲めば三尺走り梅雨

/梅の実やぐるり廻って逢着す

/旅に出てくりりょと南瓜移植して

/移植して南瓜の蔓の旅に出る

/芍薬の実生を雨の前に挿す

/袖伝ふ雨の下しる農事かな

/雉鳩が来て犬柘植に雨宿り

/四照花(やまばうし)桃色仕立てもありにけり

/紫陽花や色を分け合ふ午前午後

/硝子戸の向かう this rainy season

/青梅雨や便座冷たき朝なりき

/妻曰く手抜きうろんのたぬきかな

/初生りの胡瓜は胡瓜の味がせし

/新ジャガや肉ジャガなどに勿体なや

/青梅雨や雨合羽着て葡萄棚

/梅雨寒むやばばに小さき嚏かな

おいしいね。

みんなおいしい。

毎日がおいしい。

───ばばの言である。

 

倉石智證