蚊に喰われながら溝掃除から帰って来る。
ばーさんが洗濯物のを前に四苦八苦、
あーでもないこーでもないと腕がテーブルの上で交錯してゐる。
「どーかしましたか。なんだかうまく出来ないね」
「困るなあ、片方のアシがどっかへいっちゃった。足は気の毒だな」。
いや、そうじゃなくて、ばーさん、それはズボンじゃなくてシャツだよ。
「シャツだから探し物は腕だよ」。
ばーさんは畳みものをズボンだと思って盛んにアシを探していたわけだ。
するとばーさんは次に、
「そうだ、胴がどっかへいっちゃった」…。
結局掻き回すだけ掻き回して洗濯物のシャツの畳物は完成しないのでありました。
妻曰く、
「むかしは本当に洗濯物を畳むのが上手だった。」
「わたしが変な風にだらしなく畳むとよく突っ返されたものだったわ」。
往時茫々である。
倉石智證






