雲が湧いた

芋の露が遊びたがってゐる

転がりたがってゐる

まるで天心だ

笑ってゐる

笑ってゐる

それを蛙がこぼした

蛇が傍らを素知らぬ顔で奔りぬけた

 

花は決して理解できないような咲き方はしない。

風は決して難解に吹かない。

「喜怒哀楽があればだれでも詩人だ」

 

やなせたかし

梅雨入り。

デイの見送り。

古古古古米。

/デイの日の雨はイヤだねばば濡れるわたしも濡れる早う車に

/青梅雨や電車の長さ田圃かな

/梅雨しげしパラソルなんか間に合はず

/すっきりと由々しきことも花菖蒲

/スリバンドクここにおまいが茗荷茸

/鬼子母神の唇赫し柘榴花

/蛙鳴く土蔵近くでそれっきり

/百日草あと百日のとば口に

/桔梗の苞 幾何学のごとくして

/里芋の葉っぱは露と遊びだす

/日経に胡瓜並べみる古古古古米

/新じゃがや芋振舞の夜になり

 

倉石智證

梅捥ぎ。

/梅捥ぎやばーさんぬけたいちぬけた夏草茂る畑荒れにしを

/懐旧の話ばばにも梅捥ぐや

/梅捥ぎや故郷まるめて花いちもんめ

/梅雨の世やさはさりながら梅捥ぐや

/軽トラや梅畑まで一里半

/梅捥ぎやコンテナからも転げ落ち

/梅捥ぎや雉の声聞く隣りかな

去年も同じ畑の同じ場所で鳴いていたな。

/白加賀や氷砂糖の話など

梅酒をば様が造っていたとは。

/梅捥ぎや今ではとほい昔事指触りみる白加賀のこと

ば様のまだ三十代のころか。

きれいな文字で白加賀を一首。

 

倉石智證