新ジャガ。

糠床。

/新ジャガや男爵であれなんであれ

/撥ね出しの小芋は妻の出番かな

肉じゃがにしてさあ召し上がれ

/あの家は家族総出で芋を掘り

/夏おでんぬるきが美味しをもしろし

/糠床にト月十日を云ひわたし

/糠床の寝床に就いて三日ほど

/ドクダミの海に溺れて射干の花

/休刊日玄関に咲く月見草

/紋甲イカ花に仕立てて絹さやと

/蒸かし茄子醤油がいいとばばが云ひ

/百姓家よそ見してる間に胡瓜かな

/紫陽花の咲いて色をば図りかね

/シロヒトリただものじゃない柿落ち葉

 

倉石智證

夏は来ぬ。

夏の夕暮れ。

/苗代の富士を写せりとっぱズレ

/代田掻き田を平らかに老いひとり

/田一枚早苗饗(さなぶり)富士の高嶺かな

/苗代や水鶏(くいな)鳴き鳴く水鏡

/境涯は独りなりけり妻とゐてひとりし想ふこの夕暮れに

/夕まぐれ蚊を連れて来る入浴日

訪問入浴のスタッフの方は庭先で蚊に喰われて…。

/棚下にモアを転がす夏帽子夏下草の背丈を超えぬ

/水無月や虫、菌どっと糾(あざな)える

虫は里芋の葉っぱに黒い毛虫大発生。

カキの木にアメリカシロヒトリが大発生。

いずれもスミチオンで消毒。

サルスベリの木に今年もうどん粉病。

水無月は災厄も連れて来る。

/静けさや土鳩降り立つ夕まぐれ

/青味立つ夏夕暮れる軒端かな

/夏落ち葉梧桐の下クマンザレ

/夏落ち葉音なふひともひそとなむ

/初茄子(なすび)さうかさうかと天ぷらに

/千枚田灯点すころや虫送り

/虫送り畔練り歩く稚児の声

/楽しびはまず一杯と乾杯し妻と睦びて食べる夕食

 

倉石智證

初がつお。

おーい、雲よ。

/生協は閑、雲の謀反かな

/二番生り三番生りと胡瓜かな

/手に取って新じゃがの顔つくづくと

/おーい雲よ苗代に水鏡かな

/お湯割りを水割りにして梅雨晴れ間

/初がつおやんわり掴むハラミかな

/かーさんの皿を冷やして初がつお

/絹さやも了はりとなれば玉子とじ

/仏壇に活けて十薬生き返り

/夏帽や畳の上でひしゃげをり

/索麺や近江生姜で凌ぎけり

「鎌倉を生きて出でけむ初鰹」松尾芭蕉

「目には青葉山ほととぎす初鰹 」山口素堂

 

倉石智證