「葱買うて枯れ木の中を帰りけり」(蕪村)

木枯らしがやって来る前に。

自前のネギはその都度畑から。

/何度でも長葱のこと蕪村かな

/をもしろきことも無き世ををもしろく

(跛)ちんばの大根脚をもしろくせり

さあ、病院です。

ウェイティング中、眼の前の血圧計で(わたし)。

 

色々がある。色々とせり。

秋の傍ら旺盛なものもある。

一方減衰し、老耄し、防戦一方のものもある。

ば様を病院に連れてゆく。

訪看さんの点滴処置───定置針が入らない。

また入院になるのかと、一瞬頭をかすめる。

ここ二三日、とくに譫妄が激しい。

昼も目覚めてから、夜は就寝中でも、

のべつ喋りっぱなしである。

夜は別人とも思える胴間声が階下から二階に聞こえてくる。

看護、ばばを宥めに階下に降りる妻。

血圧が170を超えてしまった。

旺盛な皇帝ダリア

末期の秋明菊

 

倉石智證

また高処。

松手入れなかなか捗らず。

高処はゆあんゆよんだね。梯子段に足を乗せると微妙にゆらぐ。心して掛かれ。でも松くんとの対話に夢中になってゐると次第に梯子の上にゐることも忘れる。今年は五月の芽掻きが良かったのか、松葉は他の松葉を押しのけるほどに繁茂密生している。

「松は縮める」。まこと松は伸ばすのでなく、縮める。旺盛な芽を剪定して、脇の小さな芽に勢いを託す。或いは大きい枝は遠慮願って、奥の次なる枝を伸ばしてあげるようにする。かくして松くんとの対話は繰り返し続けられてゆくのだが、どうかするとその心地よさについ足下を忘れがちになるのである。

妻の縁先に呼ぶ声がする。梯子段を降りて、ティータイム。

甘いものは気持ちを寛がせるね(笑)。

 

倉石智證

/傾(なだ)り落つ秋明菊に両手かな

/葡萄樹にもみち落ちくる今朝の秋

/釈迦堂に草黄葉来てかろやかな

/見上げぬる皇帝ダリア見下ろしぬ

/針を抜くばばに認知の秋深む

気が付いたら500ミリリットルの点滴の針を抜いてしまってゐた。

/蟷螂の鎌を畳んで待つ身かな

/百日草健気て云ふか日だまりに

/おまへは赤ママの詩を唄うなと云いし人あり転向もせり

■中野重治1934検挙され、共産党から転向。

おまへは歌ふな 

おまへは赤ままの花やとんぼの羽根を歌ふな

風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな

すべてのひよわなもの

すべてのうそうそとしたもの

すべての物憂げなものを撥(はじ)き去れ

すべての風情を擯斥(ひんせき)せよ

 

/望むらくヤコブの梯子の切れ間から金木犀の匂ひ方々

/小仏や閑もて余す秋思かな

小仏トンネル手前から渋滞。

閑もて余す「秋思」かな。

 

昨日は10/23上京から帰郷。

ば様嘔吐から水様便、病院へ。

尿、血液、肺レントゲン。

腎盂炎一歩手前の尿路感染による発熱(39度まで)。

点滴。抗生剤注射。

自宅へ搬送。

今朝は朝食は完食。

昨日のことは一切忘れている。

軽くいつものやうにリハビリ。

体力はまた落ちた。

 

倉石智證