故郷の林檎が届く。

眼に赤く

手に取るとずっしりと

顔に近づけると鼻腔に甘い香が漂ふ

♪わたしは真っ赤な林檎です。

お国は遠い北の国~

寒さ厳しき折林檎はますます艶やかに甘い香を含ませ、

そして百姓の粗れし掌から旅に出ます

リンゴ可愛いや、ほーやれホー

結び結ばれる糸電話

懐かしき幼き時代の声そのまま

「元気かや」と、

みんな今では八十路をまえに、

静寂(しじま)のやうな時の埃が肩に積もる。

信濃路から遠い旅路だ。

うれしく大事に頂くよ。

「ありがとう」「佳いお年をネ」

とTelを納める。

林檎製作者市信さまは84歳。

ご高齢になられてリンゴ園を縮小されるようだ。

いつも丹精込められた林檎、

ありがとうございました。

伴走者淳子ちゃんはわたしの中学生の同期。

うれしいね。

故郷の香、ありがとうございました。

 

倉石智證

そして十日ぶりの帰郷。

/雪富士の気嵐われに問いただす

/干しトマト子に喜ばれあたたまる

/ほうとうや湯気独り身の顔隠す

/火曜日は秋刀魚の開きそれはそれ

/一陽来復過ぎて南瓜の黄なるもの

/座敷にも一陽来復陽の箭柄(やがら)

/交交の品久闊(きゅうかつ)を忘年会

/霜練れてほうれん草の甘からむ

/お湯割りの巳三杯を糺されて

/帰り来て吊るし柿揉むあたたかさ

/吊るし柿こう無からむをさみしがり

/澁ぬけて空真っ青になりにけり

/柿霜(しそう)浮かぶこう吹く柿に楊枝添え

/甲州は白根三山雪の富士田圃に立てば手を合わすなり

 

倉石智證

/年の瀬や先ゆく人を先に立て後ゆくものの水の流れや

さぶらう。さきにさぶらふ。みな歳を経りにけりな。集まりて、街のとある場所に、一年(ひととせ)をまた過ぎんとして、いざいざいざ。杯を掲げてね、いざいざいざ、よーそろ。生きて時を過ごせばいろいろ在るわね。買い物、病、事故転変、別離もまた、それらをひっくるめて、さて無沙汰を詫びる。生きてるうちにだね、声が聞こえる内にだね、さあて乾杯だ。とくに山に登るなんざあね、お天気次第の事ばっかりだったから、でも、涸沢カールで呑めたんだから、お日様が顕われてたちまち山の端を染め上げてゆく、モルゲンロート、あの穂先に登れなくても、感動、ただ感動、無心にみんな声を失くして、そして一心に眺めやるのだ。生きてゐてよかったじゃないか。感動をともにする仲間がいて良かったじゃないか。足取りも軽く、山を下りた。ついこの間だ。沢渡(さわんど)でお風呂に入ったのも。で、ぼくら山仲間は集まった。多少のうっ憤を晴らすが如く、乾杯だね、年の瀬だもの。さぶらう。みなたちまち齢古りて、さきにさぶらう、また後の人も後にさぶらう、いざいざいざ、祝着至極、杯を掲げてネござ候。

来年もまた“一万尺”、

楽しみに !

よろしくお願いいたします。

 

倉石智證