花野。

ベリーAの収穫に妻もお手伝い。

葬儀のお花を山梨に持ち帰り、ば様のお墓に活ける。

/虫集く花野辺りで落合ひて

/薄の穂ゆれて雨来る予報かな

/薄の穂風戦ぐにぎにぎを憶え

/雨降る降る能登はやさしやレベル5に

まあ日本列島はどうなってるんでせう。

/何よりも収穫のこと夫婦仲

/韮の花白きレースに蝶遊び

/火祭りの過ぎて黒富士雲の峯

/火祭りや吉田と云へばうどんかな

/遠雷やすぐに庇に雨の音

/稲の穂に実入りたしかにはたゝがみ

/士大夫となりたや村の花野来て

/お悔やみの花持ち帰るお墓かな

至る所で合掌です。

 

倉石智證

一ト筆描きの夜

1985V2020Victoria Trunova『Gardener Girl』

 

線は不思議だ/まさか一筆描きで線を曳っ張って行ったら/蝉や蝶になった/夏だものね/鳴き声はない/線はそれでもたとへやうがないくらい不思議で

 

/線をなほも曳っ張って行ったら/波がちゃぷちゃぶ/子供らの浮き輪や草履はどこへ行ったんでしょう/大人たちの背中、とほくに波に帆掛けて/水平線になった

 

/山を描かなくっちゃね/線を入れると山並み/峨峨として岩稜に風が蹲る/なんでこんなところにこんなにお花さんが咲いてゐるんでせう/花と虫たちと木道と/お喋りまで入れるととっても描き切れない

 

/人類とか平和とか正義とかを描こうと思ったら/ついに行き詰った/マイクとかプラカードなら描けさうだ/でも何十万、何百万人の足並みは、人々の悲嘆は描けさうもない/人々の暮らし向き、経済指標はなんとか描けたね

 

/そして最後は此の人たちだ/両手を出しなさい/真っ赤に血に濡れている/王様は裸だ/一筆描きにしやうと思ったらカリカチュアになってしまった/ミサイルがすっ飛んで行った/砲弾は描けなかったが/大砲とドローンは描けた

 

/一本の途があって一ト筆で進んで行ったらバッかりと穴が開いてやたらと眩しい/生を受けたんだね/太陽のやうな黄金色の夏休み/宿題や勤労/でも生は夏休みのやうに耀やかで短い/そして花市場などの脇を通って/銀河鉄道の夜/やはりその先はあちらの方にずうっと続いていくんだらうか

 

倉石智證

兄の死去。

冠動脈瘤手術、しばらくして脳梗塞発症。

昭和18年、1月1日生まれ。

持たなかったなぁ。

急にまた昭和が遠くなった気がする。

/出棺の音さみしくて百日紅

8/24。これはご近所さん。

▲兄隆現は8/23(日)に死去。享年84歳。

/息熄むで臨終を云ふ蝉の声

/妻にグレゴリオ聖歌、八月の光

妻は朝からグレゴリオ聖歌ばかりをかけている。

そして、と云ふべきか、私自身が一歩近づいたて云ふことだ。兄弟だもの其の周縁は限られているものだらう。ずずっと其の淵に寄ってゆく。傾きでも在るのだらうか。もう自然に任せるしかない。多かれ少なかれぼくと同じ齢の人間は、おそらく用心深くしているがそのことは内心深く知ってゐる。ただ口を開ければ挨拶ばかりで、なんとかやり過ごそうとし、そして一日の就寝の時間を待ってゐる。死を待つ人らが大勢にゐて、蹲らんばかりにそのヒダルさに喘いでゐる。まるでその退屈でくたびれ果ててゆく体たらくは、まったく言語道断で、澁澁ではあるがほんとうは本人にも許しがたいことで、だからわたくしの場合は最後に一杯いただくにも余計に時間をかけると云ふことになる。

ああ、清々した、とか、ああ安気したとか、そう云ふ気分になりたいものだ。死後のことはなほも溶暗でおそらく死の直前のころ、ああ、ここいら辺でそろそろ、とか云ふ境地にでもなれたらいいな。誰にでも訪れる死は公平で、だからもう出掛けて永遠に帰って来ない人を、今はただ見送るしかない。

 

倉石智證