「出版社からのご案内」
「いつか」ではなく、今、大切な人に伝えたい。 累計70万部のベストセラー、「ツバキ文具店」シリーズ最新作。
鎌倉と小高い山のふもとで、代書屋を営む鳩子。家事と育児に奮闘中の鳩子が、いよいよ代書屋を再開します。可愛かったQ Pちゃんに反抗期が訪れたり、亡き先代の秘めた恋が発覚したり、新しく引っ越してきたお隣さんとの関係に悩まされたり……。代書屋としても、母親としても、少し成長した鳩子に会いにぜひご来店ください。
この本は「ツバキ文具店シリーズ」の最新作で三冊目、第一作は2016年の『ツバキ文
具店』、続編が2017年の『キラキラ共和国』。小生は全て読んでいてブログにも感想文を
書きました。
下記に参考として載せておきますので、この本を読む前に目を通していただくと便宜だと思います。NHKテレビのドラマにもなりました。
代書家と言っても「代筆家」と違って、依頼者の意向、置かれた状況、育ち、性格等を本人とトークして手紙文を起こし、文体、字体も配慮し、筆記具の種類、封筒などもいちいち選ぶんですね。
今回の依頼人も
・料理上手の義母からいただく料理、お菓子などに、最近髪の毛が混じっていて、そのことを義母にどううまく伝えようか困っている嫁。
・新商品のペットフードが売れるような広告文を依頼するレイバンの黒いサングラスのお菓子好きの「知的ヤクザ」。
・結婚式を控えた娘と末期の癌患者の母親の微妙な心理の齟齬に悩んでいる母親の娘への手紙。
・会社から不本意なリストラをされ、素直に退職届を書く気になれない勤め人。
・50歳前半で若年性認知症になり日々物忘れの症状が悪くなっていて、すべてを忘れてしまう前に元気なときの自分の好物、趣味、仕事も遊びも楽しんだ人生だったことを証す、「認知症がひどくなった自分宛ての手紙」を依頼する元国際キャリアウーマン。
・長年、同性愛をカミングアウトできず、思い切って両親に手紙で自分の気持ちを伝えたいと願う男性。
・84歳の身ながらマイカー運転に執着し、免許返納の話に憤怒し、家族に心配をかけている夫に、離縁状を添えた妻の最後通告の手紙。
・神経質で鳩子一家の団欒時の子供の声がうるさいと、警察沙汰にしてもと脅迫する隣人の女性に出す、鳩子の幼い娘や息子が出す手紙。
このようなそれぞれのケースにふさわしい手紙の内容を考えるだけでも大変なのに、優
雅な女性らしい字体、末期の病人の枯れた小枝のような、そしてかな釘のような子供の字
などを用意し、この本でいろいろな味わいの手紙が読めるんですね。
著者のストーリーの語り手としてのすばらしさに感嘆すると同時に、古都鎌倉を舞台に
したこの「ツバキ文具店」シリーズの醸し出す、ウイットに富んだ「慈味」に癒されます。
さて題名の『椿の恋文』ですが、実は鳩子の祖母、先代の代書家に恋人がいたことが、
判明したんですね。ある時、伊豆大島に暮らしている青年が、鳩子の祖母が青年の叔父に
出したラブレターの束を持参。あの謹厳な祖母に隠れた恋人がいて、それも不倫関係と
知って鳩子は驚く。と同時に先代の書棚から祖母のかし子宛の男性の書いた手紙も出てきた。
その情熱的なラブレターも掲載されていて、男性の武骨な字体と祖母かし子の綺麗な字体の対比も楽しい。
さてこのシリーズの謎の一つに、鳩子の父親の話が一向に出てこない。実に不自然なこ
となんですが、大きな謎ですね。
参考1
『ツバキ文具店』(著)小川糸 2016年4月 幻冬舎 | 生涯学生気分 (ameblo.jp)
参考2
『キラキラ共和国』(著)小川 糸 2017年10月 幻冬舎 | 生涯学生気分 (ameblo.jp)