じっくり味わう!題「ストレス」 NHK『俳句王国』(H.23.9.26) | 生涯学生気分

生涯学生気分

後期高齢者ですが「生涯学生気分」の境地で若々しく、知的な記事を発信して行きたいと思っています。

先週に続いての俳句界を代表する豪華メンバーの会。
有馬 朗人   (「天為」主宰)
宇多 喜代子  (現代俳句協会会長)
廣瀬 直人   (「白露」主宰)
黒田 杏子   (「藍生」主宰)すとれす星野 椿    (「玉藻」主宰)
寺井 谷子   (「自鳴鐘」主宰)
司会は塚原愛アナウンサー
<合評は飽くまでも私の俳句勉強の素材としての聞き書きメモですので、漏れやニュアンスが違う場合もあると思われますが、ご容赦ください。>

題「ストレス」
流寓の日日や空き缶蹴れば秋          有馬 朗人
4点句(廣瀬、黒田、宇多、寺井選)。「空き缶蹴れば秋」、五七五とちょっと外れてはいるが、「流寓の日日」とよく結び付いている(廣瀬)。/かなり大人の人の句では。一種の人生句。流寓の日日で下句が重いものでなく「空き缶蹴る」と来たのがいい(黒田)。/「空き缶蹴れば」の後はやはり秋でしょうね(宇多)。/蹴られた空き缶の音が何か空しさ、切なさも思わせる(寺井)。/父親のサラリーマン生活で学生時代は引っ越しが多く、青春時代はアメリカに行ったり来たりの職探しの生活だった(有馬)。

探しあぐねている木耳のような一語       寺井 谷子        
3点句(黒田、有馬、宇多選)。詩人として言葉を大事にしている。「木耳のような一語」がいい(黒田)。/木耳(きくらげ)という捕まえどころのないへらへらしたものを持ってき来たのが面白く、フラストレーションと通い合っている(有馬)。/木耳の比喩が面白い(宇多)。/俳句作りはやはり常に手探り、引っ張り付けるというストレスがあるのでは(寺井)。

噂まだ燻つてゐるとろろ汁           廣瀬 直人
3点句(星野、有馬、寺井選)。「噂」と「とろろ汁」の組み合わせが面白い。とろろ汁でストレスが消えてゆくような(星野)。/ストレスを感じながらとろろ汁を食べてホッとしている感じが面白い(有馬)。/燻っているのだからいい噂ではない。とろろ汁で私の句の木耳と同質感があると思った(寺井)。/私の住んでいる地域ではオバサンたちの噂話がなかなか消えない。そこでとろろ汁でもと(廣瀬)。

月光が身を刺すストレスがつのる       宇多 喜代子
2点句(星野、廣瀬)。きりきりと刺すような月光の明るさの下でストレスを発散できないやり場のない人の気持ち(星野)。/峰を離れて山に登る月。大きな景。「ストレスがつのる」、実感がある(廣瀬)。/ストレスと言う言葉をそのまま使いたかった。「月光が身を刺す」、美しいものには両面がある(宇多)。
   
長命無欲無名往生白銀河           黒田 杏子
面白い句。これでもストレスがある。白銀河を見てもう一度仕事をしてみたいなとのストレス(有馬)。/母95歳、父88歳で亡くなった両親の姿。両親のようには死ねないなとのコンプレックスというかフラストレーション。こんな句も作ってみたいなと(黒田)。

原発のストレステスト雁渡る         星野 椿
現代的な俳句をよく作りましたね(有馬)。

○感想
黒田~ストレスなんて題で作ったことが無いが。題に引き出されて自分の中から出て来ると言う事実に自分でも驚いた。
宇多~面白かった。自分ではストレスがないと思っていたが、ストレスを持っていない人は無く自分をちゃんとさせるために自分で折り合いをつけているんでしょうね。
有馬~普段季語で訓練している伝統派の我々が先週の「青春」、今回の妙てけれんの「ストレス」との題で俳句を作らされましたが、おかげでストレスが解消しました。ありがとうございました。

NHK俳句王国のHP
http://www.nhk.or.jp/haiku/