毎週朝日新聞に掲載される朝日俳壇をテキストに気ままに自習している俳句愛好者です。「生涯学生気分」凸凹コメントには頓珍漢な鑑賞もあると思いますが、俳句初心者の「蚯蚓のたわごと」とご容赦下さい。
稲畑 汀子 選
① 木道の果ては花野に沈みけり ⑥ 降ればやみ止めばすぐ鳴く秋の蝉
② 身を隠すものひとつなき花野かな ⑦ 虫すだく庭に心を解(ほど)く夜
③ 雨上がり萩の乱れの立ち直る ⑧ いぼむしり思はぬ距離を飛びにけり
④ 駅を出て稲妻遠くありにけり ⑨ 秋の蚊に気を許したる昼下り
⑤ 吊橋に人の声する霧の中 ⑩ 雨露に濡れそぼちつつ萩括(くく)る
① 木道の果ては花野に沈みけり ⑥ 降ればやみ止めばすぐ鳴く秋の蝉
② 身を隠すものひとつなき花野かな ⑦ 虫すだく庭に心を解(ほど)く夜
③ 雨上がり萩の乱れの立ち直る ⑧ いぼむしり思はぬ距離を飛びにけり
④ 駅を出て稲妻遠くありにけり ⑨ 秋の蚊に気を許したる昼下り
⑤ 吊橋に人の声する霧の中 ⑩ 雨露に濡れそぼちつつ萩括(くく)る
選者講評
一句目。大花野である。設けてある木道の端まで行くと、道なき道へ下りねばならない。自然豊かな秋の野が描けた。
二句目。丈の低い秋草ばかりの花野にとまどう作者。
三句目。雨に乱れた萩叢(はぎむら)が立ち直る。自然の力。
一句目。大花野である。設けてある木道の端まで行くと、道なき道へ下りねばならない。自然豊かな秋の野が描けた。
二句目。丈の低い秋草ばかりの花野にとまどう作者。
三句目。雨に乱れた萩叢(はぎむら)が立ち直る。自然の力。
「生涯学生気分」凸凹コメント
一句目。どこかで見た「木道の果てはそびゆる雲の峰」を思い出しました。「木道の果て」で私も句を作ってみたいと思っていたんですが。
五句目。この句もデジャブ感があります。俳句では避けられないのかな。
八句目。いぼむしり=カマキリ
一句目。どこかで見た「木道の果てはそびゆる雲の峰」を思い出しました。「木道の果て」で私も句を作ってみたいと思っていたんですが。
五句目。この句もデジャブ感があります。俳句では避けられないのかな。
八句目。いぼむしり=カマキリ
金子 兜太 選
① 阿蘇寝釈迦なんでもない夜の虫しぐれ ⑥ 夏草や一村去りし被曝の地
② 船旅や完全無欠天の川 ⑦ 地震の地の月光白し真つ平
③ ゆふされば月撮る妻のかひな哉 ⑧ ひつそりと無花果を煮て店を閉づ
④ 山からも津波襲いし野分かな ⑨ 野良猫の潜むゴ―ヤの日蔭かな
⑤ はにかみも死語となりつつ白露かな ⑩ 素振りして手に豆つくる子規忌かな
① 阿蘇寝釈迦なんでもない夜の虫しぐれ ⑥ 夏草や一村去りし被曝の地
② 船旅や完全無欠天の川 ⑦ 地震の地の月光白し真つ平
③ ゆふされば月撮る妻のかひな哉 ⑧ ひつそりと無花果を煮て店を閉づ
④ 山からも津波襲いし野分かな ⑨ 野良猫の潜むゴ―ヤの日蔭かな
⑤ はにかみも死語となりつつ白露かな ⑩ 素振りして手に豆つくる子規忌かな
選者講評
一句目。中七のとぼけた言い方がきて、寝釈迦のおわす阿蘇の広大な秋夜が伝わる。
二句目。この句も独自なひと言「完全無欠」の働き。
三句目。「月撮る」がもたらす現代味。
十句目。とにかく子規といえば野球だ。
一句目。中七のとぼけた言い方がきて、寝釈迦のおわす阿蘇の広大な秋夜が伝わる。
二句目。この句も独自なひと言「完全無欠」の働き。
三句目。「月撮る」がもたらす現代味。
十句目。とにかく子規といえば野球だ。
「生涯学生気分」凸凹コメン
四句目。山津波という言葉もありますね。
八句目。ちょっとミステリアスな感じ。無花果(いちじく)の煮物は食べたことがありませんね。
四句目。山津波という言葉もありますね。
八句目。ちょっとミステリアスな感じ。無花果(いちじく)の煮物は食べたことがありませんね。
長谷川 櫂 選
① 口中に無花果の花咲かせけり ⑥ ひいやりと足にまつはるほたるかな
② 秋の日や光も影も我のもの ⑦ どぶろくのぶつぶつ言へばかなしかり
③ コスモスの影写りけり旅の顔 ⑧ ぱつと見てさつと買ひたる秋刀魚かな
④ 枝豆を大豆と知らず五十年 ⑨ こほろぎの近寄れば鍬(くわ)休みけり
⑤ 全力で駆けてゆく夏応援す ⑩ 新酒古酒濁り酒飲み年老いぬ
① 口中に無花果の花咲かせけり ⑥ ひいやりと足にまつはるほたるかな
② 秋の日や光も影も我のもの ⑦ どぶろくのぶつぶつ言へばかなしかり
③ コスモスの影写りけり旅の顔 ⑧ ぱつと見てさつと買ひたる秋刀魚かな
④ 枝豆を大豆と知らず五十年 ⑨ こほろぎの近寄れば鍬(くわ)休みけり
⑤ 全力で駆けてゆく夏応援す ⑩ 新酒古酒濁り酒飲み年老いぬ
選者講評
一席。無花果と書くものの実の中はこれすべて花。小さな花が口じゅうに広がった。
二席。秋の日の明るい光。くっきりと落ちる影。それだけでうれしい。
三席。コスモスの影を浴びながらコスモスの中をゆく。旅情。
一席。無花果と書くものの実の中はこれすべて花。小さな花が口じゅうに広がった。
二席。秋の日の明るい光。くっきりと落ちる影。それだけでうれしい。
三席。コスモスの影を浴びながらコスモスの中をゆく。旅情。
「生涯学生気分」凸凹コメント
二席。秋は光(影)を楽しむ季節でも。
四席。大豆の未熟なのが枝豆。種になるのが大豆とか。
五席。どこに切れが入るんでしょうか。応援すが分からない。
六席。「ひんやり」でなく「ひいやり」。ドイツ在住の作者。ドイツ人は蛍を観賞するんでしょうか。
八席。秋刀魚はこう買わなくちゃ!
二席。秋は光(影)を楽しむ季節でも。
四席。大豆の未熟なのが枝豆。種になるのが大豆とか。
五席。どこに切れが入るんでしょうか。応援すが分からない。
六席。「ひんやり」でなく「ひいやり」。ドイツ在住の作者。ドイツ人は蛍を観賞するんでしょうか。
八席。秋刀魚はこう買わなくちゃ!
大串 章 選
① 西鶴忌地球忙しく回りけり ⑥ 台風の経済効果論ずる子
② 手に稲穂のせて刈る日を決めてをり ⑦ 稲の花僅かばかりの命かな
③ 雲はまだ峰を崩さず秋暑し ⑧ 北よりの葉書に秋の声のあり
④ 大夕焼奈落の底の我と知り ⑨ 雨さへも爽やかにして旅の朝
⑤ 初嵐転校生の多くして ⑩ 絢爛(けんらん)と芒輝くとき来たる
選者講評
第一句。矢数俳諧で一昼夜2万3500句詠んだという井原西鶴。ちょっと忙しすぎはしないか。第二句。稲穂を手に乗せ、刈る日を丁寧に吟味している。鋭い眼差。
第三句。真夏と同じように雲の峰が輝いている。まさに秋暑し。
① 西鶴忌地球忙しく回りけり ⑥ 台風の経済効果論ずる子
② 手に稲穂のせて刈る日を決めてをり ⑦ 稲の花僅かばかりの命かな
③ 雲はまだ峰を崩さず秋暑し ⑧ 北よりの葉書に秋の声のあり
④ 大夕焼奈落の底の我と知り ⑨ 雨さへも爽やかにして旅の朝
⑤ 初嵐転校生の多くして ⑩ 絢爛(けんらん)と芒輝くとき来たる
選者講評
第一句。矢数俳諧で一昼夜2万3500句詠んだという井原西鶴。ちょっと忙しすぎはしないか。第二句。稲穂を手に乗せ、刈る日を丁寧に吟味している。鋭い眼差。
第三句。真夏と同じように雲の峰が輝いている。まさに秋暑し。
「生涯学生気分」凸凹コメント
第五句。風の又三郎を想起。
第六句。経済学一年生の息子さん。
第七句。「稲の花」、私も写真でしか見ていません。掲載写真は「季節の花300」より拝借。
第五句。風の又三郎を想起。
第六句。経済学一年生の息子さん。
第七句。「稲の花」、私も写真でしか見ていません。掲載写真は「季節の花300」より拝借。
○「生涯学生気分」の特選三句
ぱつと見てさつと買ひたる秋刀魚かな
秋の日や光も影も我のもの
雨上がり萩の乱れの立ち直る
ぱつと見てさつと買ひたる秋刀魚かな
秋の日や光も影も我のもの
雨上がり萩の乱れの立ち直る