あのね、あのね、
えっとね、えっとね
小さな子供が
言葉を紡ぐ。
前に、ここでね…
手を引く親に語りかけ
あのね、あのね、
えっとね、えっとね…と
見聞きし
習い覚えたばかりの
言葉を
頭の中の
何処にしまったか
懸命に探す。
間を繋ぐことを
覚えたのか
頭の中にある
書庫の鍵なのか
あのね、あのね、
えっとね、えっとね…と
繰り返す。
それで?と
親が聞き返せば
それでね、えっとね…と
手を引かれ
親と共に歩きながら
懸命に覚えた言葉を
紡ぐ努力に励んでいる。
何処かの、
いい年齢に成った者が
苦労せずに
生きている人が嫌だった。と
小学生の列に
車を突っ込んだ。
何を見ているのだろうね。
毎朝、毎朝、
8時過ぎには
ランドセルや
手提げ鞄を手に持って
学校通う小学生の
何処が苦労知らずなのか
小学生の時に
勉学に励んでいたならば
決して、小学生を
見下して、傲り
己ばかりが、苦労を
背負っているように
思うこともなかったろう
何が、嫌だ。
これが嫌いだ。
勉強が嫌だ、嫌いだ。と
当時、自分ばかりの
苦痛や苦労のように感じ
嫌だ、嫌いだ。と
我儘に投げ出し
怠けてしまえば
主観的に
苦労を知らない者を
この世界に
己が見出し
自分ばかりが
苦痛を堪えて
生きているように
思うのだろう。
情けのない
人でなし。
人として
今を生きる努力をしている
生者は
他者をうらめしく思う
亡者に成ってしまわぬように
恥を知り、
自分が堪えていることを
他の誰かも今
堪えて生きていることを
気付き、信じ
この世界に見出して
憐れみ、労い、慈しみ
人世の恥、
業にエゴの危うさに
気付いては
他者に寄り添い
他者を支えて
己を救け
己の苦を携えながら
今の自分を越えてゆく
人として
この世界に生まれ
自分の世界に引き籠もり
自分以外の他者が
この世に居ることに
気付くことなく
死んでゆき
亡者、舟幽霊と
成り果てて
この世を独り彷徨い
飢え渇き
他者を道連れに
消せない業に罪を
背負ってゆく。
正気にかえる機会は
幾らでも
生きようとする努力
気付く努力を
怠らなければ
誰にも平等に
合ったのでは?
この世に生まれ
自分が生きていた時の
有り様さえも
忘れたように
なんで自分はこの世に
生を受けたのか?
自分は望んでなど
いなかったのに…と
人の誰もが通過する
テーマ、課題に
囚われる。
抜け出す手段は
誰もが教わって
既に知っている。
他者には
救ける術はない。
当人が、我欲に
囚われず
眼を心を曇らせず
眼前に広がる世界を
穢さずに
乗り越えてゆくしかない。
誰もが今の自分と闘って
生きている。
気付けず
無念を弔えず
他者の無念を背負えずに
生き抜くことは
難しい。