フランス政府は二〇二〇年までに、タバコ一箱を今までより四割高い約一〇ユーロ(約三〇〇円)に段階的に値上げすることにした。税収増と若年層の喫煙率抑制が狙い。

 前にも私はたばこ課税の思い切った引き上げを要請していた。

 かつては私自身が一日一〇〇本以上タバコをふかし、現在その肺に与えた害に悩んでいるだけに、あらゆる手段を盡してタバコの消費抑制に努力すべきだと思っている。

 大蔵省で予算を扱っていて、人と相対で折衝することが多く、ついついタバコを手から放すことのなかった私は、予算の最後の詰めの段階で深酒、タバコの飲み過ぎと睡眠不足などが原因で帰宅途中のタクシー内で倒れ、救急車で入院させられた。医師の説教を容れて即日タバコを止めることにした。以来一本も吸っていない。

 その年の予算折衝でタバコ一本につき一円の値上げであったが、本当は少なくとも一本二円を引き上げたかったが、三党連立内閣で、保守党の強い反対にあって実現できなかった。

 あのピースの両切りの缶を開けて臭いを吸い込む時のおいしさは忘れられない、酒は百薬の長と言われるのにタバコは健康に害あると言われるだけ。

 葉タバコの生産農民、タバコ小売店の手当は充分にして、思い切って値上げを断行したらよいと重ねて思う。最終目標は無論タバコの禁止であることは言うまでもない。

 

     29・6・29

 金融行政というような言葉が適当か、どうかよくわからないが、今の金融庁の在り方について人は何と言っているか。金融検査庁、金融検察庁などという言葉を聞く。大蔵省銀行局の検査部があった頃は今よりもっと組織も小さく、人員も少なかった。金融庁を分離することにわれわれは反対していたが、金融庁として独立してから人員も組織も俄かに大きくなって、銀行融資の細かいことまで、やかましく言うようになった。人は何と言っているか。どうも、今は銀行の箸の揚げ下げまでやかましく言うものだし、又、銀行首脳部が慨して弱くなっているので、それぞれの判断に基く力を発揮しえない状況ではないか、と言われている。融資の一件一件について、やかましく言うものだから、銀行もビビッて自分の判断で行動できないのではないか。融資の申込みが少ないので貸せないと言うのは本当ではないのではないか。

 金融庁をも一度財務省(大蔵省)に戻して、機構も人も小さくしたらよいのではないか。 

 そうすれば、金が今よりは流れるようになるのではないか。

 金融の行政の必要が言われる由似である。

 

        29・7・1

 去年渋谷のセルリアンホテルのピカピカのロビーで滑って、右脚の骨にひびが入って以来、どうも痛みもあるし、又、急いで歩くのが不自由になったので、鳥取に行く時は、全日空の言われる通りに車椅子で航空機に乗り降りを余儀なくされている。こちらが考える以上に車椅子の操作も上事なので委せている。

 長い廊下を車椅子に乗せられて行く間は、とくに初めの頃は、顔を見られることが気になって嫌だったが、だんだん馴れてみると、なかなか楽でいいし、脚の回復のためにもためになると思うようになっている。航空機へは一番先に乗せて貰えるし、降りる時は一番最後になるけれど、別に急ぐこともないと、ゆっくり構えている。

 それでも、知っている顔に会うこともあるし、それは、噂さが拡がる種のような気がして嫌だが、まぁ仕方がない。

 大体障碍者に親切に事が運ぶようになっている。

 ただ、車椅子の出来工合は必ずしも良くはないと思うのは、車椅子の巾が少し狭いばかりではなく、乗って足を置くのも不自由だし、もっと専門的に検討していい車を作ってくれたら良いと思う。そう需要がないとも言えないのだから、少し高くても使用する老人が増えて行くことを考えれば、採算はとれるのではないか。