亜リン酸トリメチルを出発物質とする4段階の製造方法では、まだ塩基を持っていないために第5段階で塩基を使わない方法を選択することになった。
しかし、5段階の製造方法にならざるを得なくなり、その場合は第一段階で酸を中和する為に塩基が必要となり、その塩基を第5段階でも使うことができる。
土谷は最初、第1段階の酸の中和に水酸化ナトリウムを使ったとされる。
水酸化ナトリウムと言えば、小学校の理科の実験にも使われる、塩基の中の塩基である。(笑)
しかし、水酸化ナトリウムを第5段階で使うとなると、大きな問題が生じる。
水酸化ナトリウムは確かに酸を中和してくれるのだが、同時にサリンを分解してしまう。
そこで土谷は、分子軌道計算ソフトを使って、次の塩基を探した。
その候補がトリエチルアミンだったのだが、なぜか全くサリンが出来なかったらしい。
そういえば、この謎を解こうと思いつつ、そのままになってるなあ。
謎が解けたら、中川に教えてあげたいものなのだが。(笑)
トリエチルアミンでの失敗のあと、土谷が見つけ出したのがジエチルアニリンである。
これは問題なく、サリンを合成することができた。
経緯をまとめると次のようになる。
①4段階の反応 メチルホスホン酸ジクロリドを使用。→成功。
②5段階の反応 水酸化ナトリウムを使用。→第1段階成功。第5段階失敗。
③5段階の反応 トリエチルアミンを使用。→失敗。
④5段階の反応 ジエチルアニリンを使用。→成功。
この④の方法で、地下鉄サリン事件のサリンが作られた。
松本サリン事件のサリンは①の方法である。
う~ん、やっぱり土谷の手記、読んでみたいなあ。