おそらく、サマナ全員が動員されているのだろう。
相当な広さがあるサティアンの玄関ホールに入り切れず、ドアの外にまでサマナがあふれている。
しばらく待っている間にも、僕の後ろに次々とサマナたちがやって来ていた。
玄関ホールに入ってみると、そこはまさに立錐の余地がないほどに、大勢のサマナで埋め尽くされていた。
ちょうど対角線上の反対側左方向に、機動隊がぶち破ったドアがある。
これはどういう順番で人が流れていくんだろうなあ、などと思いつつドアの外に目をやると、そこにはせっせとサマナたちを外に放り出している機動隊の姿があった。
しかし、サティアンの中には、全く入ってこれない。(笑)
そりゃあ当然だよねえ。
そうこうしている間にも、玄関ホールは相も変わらず立錐の余地のない状態が続いていた。
サマナたちは全速力で建物を一周し、元の場所に戻って来ているのだから。
これぞ、オウム真理教の秘儀。
人間の盾ローテーション!(笑)
終わることのない人の壁。
よくぞこんなバカげた作戦を思いついたものだと思う。
人の壁は流れていき、やがて僕の順番が回って来た。
他のサマナと同様に、無抵抗のまま外に放り出され、地面に叩きつけられる。
そして、再びグルッと回って、サティアンの玄関ホールへと戻る。
当然のごとく、機動隊は一歩も中には入れない。(笑)
これを3回繰り返した。
満身創痍の上にも満身創痍。
全身の傷が増え、服もあちこち破れてくる。
まあ、こっちも大変だったけど、機動隊も大変だったようだ。
何百人外へ放り出しても、いつまでたっても終わりがないのだから。
機動隊は、1回目は「なんなんだ、こいつらわー。」
と言っていた。
2回目は、「お前ら、いいかげんにしろー!」
そして、3回目。
「もう、やめてくれー!」
と、泣きが入っていた。(笑)
そりゃそうだ。
何百人も相手にしていたら、いい加減疲れてくる。
しかも、頑張った分の成果が何もないのだから。
機動隊員は、まるで無間地獄に落ちたかのような永遠の苦しみを味わっていたのだが、その苦しみは唐突に終わりを迎えることとなる。