スズメバチは見境なく攻撃を仕掛けるわけではなく、攻撃を仕掛けるのは敵が巣に近づいた場合だけである。
しかも、いきなり攻撃したりはしない。
攻撃を仕掛ける前には、必ず警告をする。
「ここから先は侵入禁止です。お帰りください。」
と、言っているのだ。
「お帰りにならないのであれば、攻撃を仕掛けますよ。」
と言っているにも関わらず、巣に近づくから刺されるのであって、スズメバチから見れば攻撃は正当な手段である。
まあ、スズメバチが声をあげても、その声は小さすぎて人間には聞こえないのだが。
では、スズメバチはそんなにまでして、一体何を守っているのだろうか。
それは女王蜂である。
巣を守るのは、巣の中に女王蜂がいるからである。
したがって、女王蜂が無事なら、巣を捨てるという選択肢もあるのだ。
ハチクマには、自分たちの攻撃が全く通用しない事を理解したスズメバチたちは、攻撃以外の女王蜂を守る方法を選択する。
このあたりは、人間のようにあれこれ迷ったりはしない。
攻撃するか、逃げるか、どちらかしかない。
本能は、勝ち目のない戦いを、いつまでも続ける事を選択しない。
そしてスズメバチたちは一斉に逃げ出し始める。
逃げるという選択をした瞬間から、目の前に敵がいても一切攻撃をしなくなるのだ。
次々に逃げ出すスズメバチ。
そのなかに女王蜂も紛れている。
ハチクマは逃げていくスズメバチを追いかけたりはしない。
彼らは無意味な殺生をしない。
彼らはただ、目の前にある餌を食うだけだ。