勢力図が塗り替えられるにつれて、何故だかアリが姿を見せなくなってきた。
「遊んでないでワークに戻れ!」
と、幹部から叱られたのだろうか?(笑)
アリがいなくなり、テントウムシの成虫がどこかに飛んで行って、残されたのはアブラムシとテントウムシの幼虫だけになった。
こうなってしまえばもはや幼虫の天下である。
アブラムシのバイキング状態で、どんどん大きくなり蛹から成虫へと育っていった。
そんなある日の事。
メロンの葉っぱの裏を見てみると、もうどこにもアブラムシの姿はなかった。
いつものことながら、上手く出来てるもんだよねえ。
と思っていたら、なんかひとつだけ動くものがあることに気が付いた。
一匹だけ出遅れてまだ大きくなれない幼虫が、ものすごい勢いで走り回っていた。
ただ動き回っているのではない。
普段の動きとはまるで違って、テントウムシの幼虫がこんなに早く動けるのかと思うほどのスピードだった。
餌を探しているのだろう。
蛹になるにはまだ後1回脱皮が必要に思える。
が、残念なことに、アブラムシはお前達に全部食い尽くされてしまったのだよ。(笑)
それでもその幼虫は、一瞬たりとも止まることなく、葉っぱから葉っぱへあちらこちうらへと動き回っていた。
よくもまあ、そんな体力があるもんだなあ、と感心してはみたもののこちらとしても打つ手が無い。
まあ、そのまま放置するしかなかったのだが、翌日メロンを見て驚いた。
葉っぱの裏側に小さな蛹がへばりついていたのである。
なんということでしょう!
小さいまま蛹になりやがった。(笑)
先に蛹になった幼虫たちは、この小さな蛹よりも一回り体が大きかった。
だからこいつは自分も大きくなろうとして、懸命に餌を探し回っていた。
しかし、餌が見つからなかったので、方針を転換したということなのか。
ふ、やるじゃないか。
テントウムシのくせに見事だ。
大きくなることにこだわり幼虫のまま死ぬことよりも、小さくても蛹になることを選んだ。
なんたって、ヴァジラヤーナは結果が全てだからな。
数日後。
蛹は抜け殻だけになっており、その側には今まで見たこともないような、小さなテントウムシがいた。