アシナガバチの動きには相変わらず無駄な動きが多いのだが、必要な事もまたもの凄いスピードでこなしていた。
最初に首の辺りに噛み付く。
続いて、幼虫の身体の表面の皮を、少しずつ切り開いていく。
まあ、なんといいましょうか、着ぐるみから頭に被っているものを外し、背中のジッパーを降ろすと中の人が出てくる。
みたいな。
要するに、蛾の幼虫が活動するために必要な身体の外側の固い部分、そこを外して中身の柔らかい部分だけを肉団子にしていく。
見る見るうちに、ヨトウムシの姿がこの世界から消えていくように見える。
その消えてしまった分だけ、アシナガバチの身体の下にある肉団子が大きくなっていく。
どうやって肉団子にしているのかは、あまりにスピードが速すぎて肉眼では捉えられない。
と、ここで不思議なことに気が付いた。
肉団子が思った以上に小さいのだ。
これは一体、どういうことなのだろう?
アシナガバチの抱えている肉団子の大きさは、どう見てもヨトウムシの身体の大きさの4分の1程度にしか見えない。
水分が蒸発したということなのだろうか?
または、もしかしたら成虫もヨトウムシを食べているのだろうか?
などと思っていたら、解体ショーは終わり、アシナガバチは勢いよく飛び立って行った。
その後には、さっきまでアシナガバチがいた葉っぱの上に、黒いゴマ粒のようなものがくっ付いた薄いセロファンのようなものが残されていた。
なるほどねえ。
これじゃあ、何かのただのゴミにしか見えない。
それがさっきまでヨトウムシだったとは、誰も気が付かないだろう。