治療を終えて2階に戻ってくると、すでに夜になりCBI他の部署のサマナたちがワークを終え、見学に来ていた。
中には腕に覚えのある者たちもいて、スパーリングに参加し始めた。
と、ここで高橋 克也登場。
高橋 克也とは、わりと親しいというわけではないが、信徒時代からの顔見知りではある。
高橋 克也はああ見えて、とは言ってもどう見えているのかは人それぞれだと思うが。
まあ、とにかく、柔道は二段である。
なんて素晴らしいんだ!
高橋 克也は他の連中と同じように、まだ新しい柔道着を着ていた。
しかし、その腰にはブラックベルトが光っている。
ベルトの端が擦り切れて白くなっている、年季の入った黒帯。
出家する時に、柔道着は捨てられても黒帯は捨てられなかったのだろう。
思い出が一杯詰まっているんだろうなあ。
で、その高橋 克也は、先ほど僕と対戦したサマナと相対することに。
「先生、そんなやつ懲らしめてやってくだせえ!」
と、心の中で思うのだが、口には出さない。(笑)
組み合ったまま、ふたりはあまり動かない。
別に愛を確かめ合っているわけではないが、投げ技だけでは決まらないために、その後のことを考えているのだろう。
と、ここで先生が動く。
サマナの体勢を崩して、そのまま腕ひしぎ逆十字の体勢へ持っていく。
そのまま、見事に一本が決まった。
やっぱ強えな黒帯。
と思うのだが、高橋 克也は相手の腕を傷つけるところまで技を極めていなかった。
優しいねえ。
ポーシャといいスマンガラといい、どうして君たちはそんなに優しいのだろう。
オウムで出世するために必要な条件は、基本的に性格が悪いということである。
幹部たちの大半は、「他の苦しみを自己の喜びとし、自己の苦しみを他の苦しみとする。」
そんな連中だ。
正直者がバカを見るのは世の常だが、それはオウムにおいても同じだと言える。