右腕がまともに動かないので治療に行くことにした。
こういう時オウムは便利だ。
2階で武術訓練をやっていたので、鉄製の階段を上って3階へ向かう。
シールドルームの脇を抜けて、その奥にあるAHIに辿り着いた。
先生が「どうしましたか?」と聞くので、「肘を痛めました。」と答える。
この辺は、オウムも一般社会も違いは無い。
「何をされたんですか?」と聞いてきたので、「腕ひしぎ逆十字。」と答える。(笑)
「え、うでひし・・、なんですか?」
と聞いてくるので、「関節技です。」と答える。
重ねて、「なんで関節技を・・、」と聞いてくるので「武術訓練。」と答える。
さらに「なんで武術訓練を・・、」と聞いてきて、もはや頭の悪い子の会話になってしまっている。
仕方が無いので、サブミッションは専門家ではないが、腕ひしぎ逆十字の解説をする。
「腕を両手でこう抱えて、足を首にかけて、手首をこっちに返して、腹に乗せて伸ばす・・、」
と説明していると、
「あ~、なるほど、関節を固定して、ふんふん、ここをてこの原理で・・、」
「確かに、ひしがれてますねえ。」
と感心することしきりだった。
さすがは医者、人体の構造をよく理解している。
腕ひしぎ逆十字が効率よく肘を破壊することをすぐに飲み込んでくれた。
「骨は折れていないようなので、シップをしておきましょう。」
とりあえずはこれで一安心と思っていると、とんでもないことを言い出した。
まあ、オウムでは常識と言ってもいいことではあるのだが。
「成就者の方に触れるわけにはいきませんので。」
ちょっと待った~!
「いやいやいや、そんな、初恋の女の子じゃあるまいし。」
「触っていいから。」と言っても、全く相手にされず。
というわけで、先生の全く手を触れないアクロバチックな治療が始まった。
超能力者かあんたは!
目の前で見ていて嫌になってくるぐらい酷い有様でシップ薬が固定されたのだが、こんなことなら左手一本でも自分でやった方がましだったなと後悔したものだ。