泣くほどのこともあるまいとは思うのだが、よっぽど脅されていたのかもしれない。
たしかに、おやっさんを怒らせると怖いからなあ。
まあ、端本の真面目さがこんなところにも表れているのだろうと思う。
何はともあれ、謎の機械と謎のアンプルは、ロシア軍施設から日本国内へ持ち込まれてしまった。
もしかしたら、日常的に世界中のあらゆるものが日本に持ち込まれているのかもしれない。
しかし、それを防ぐ方法は見つかっていないのだろう。
さて、迎えのバスに乗り、上九へと向かう。
一仕事終えた後で、皆のんびりと談笑していた。
雪が降るようなロシアとは違って日本はすでに暖かくなり始めており、窓から入り込んでくる風が心地よい。
その時、少し離れた上空をヘリコプターが飛んでいた。
何気な~く、そのヘリコプターを眺めていると、突然ヴァンギーサが大声を出した。
「窓を閉めろ!」
「毒ガス攻撃だ!」
はい?
何の話だ、まったく。
と思っていたら、Vが「あんなに遠くなんだから、関係ないでしょう。」
と反論をした。
これは当然だと思う。
あの距離から毒ガスを撒いたとしたら、我々に届く前に一般市民が巻き添えを食って死んでしまう。
が、しかし、ヴァンギーサは素早くこれに応えた。
「それは無知だよ。」
まあ、偉い幹部の方がそう仰っているのだから、従うより他にない。
渋々窓を閉めながら、正直、大丈夫かなと思った。
今、一体、上九で何が起きているのだろうという思いとともに、もしかしたらオウムはもう終わりなのかもしれないなという思いが湧き上がってきた。