ある時、麻原がぽつりとこんな事を言った。
「アパンクリアはパイロットババの修行法なんだよ。」
そう言った麻原は、なんだか寂しそうだった。
その時に麻原が言ったのはそれだけである。
だからどうなのだの部分がない。
この前後に何の話もない。
脈絡もなく、そう言っただけである。
不思議な気がする。
まあ、麻原がこういうよう分からんことを言うのは別に珍しいことではない。
だから弟子たちはそれぞれのカルマに応じて様々な妄想をしてしまう。
不思議なのは、なぜアパンクリアだったのか?である。
さらに言うなら、なぜアパンクリアだけだったのか?である。
なぜヴァヤヴィヤではなかったのか?
なぜヴァヤヴィヤとアパンクリアではなかったのか。
オウムの修行と言えば、真っ先に思い浮かぶのはヴァヤヴィヤである。
ヴァヤヴィヤからの~ツァンダリー、これこそがオウムの修行法というイメージである。
オウムの修行が始まるのは、ヴァヤヴィヤからであると言っても過言ではないのだ。
オウムにはヴァヤヴィヤとアパンクリアの他にも様々な呼吸法やムドラーがある。
スクハプールバカにブラーマリー、バストリカにツイッタリー、マハームドラーにマハーバンダムドラー。
しかし、これらは全てヨーガ根本経典に書かれている、言わば誰でも知っている修行法である。
それに対して、ヴァヤヴィヤやアパンクリアはオウムにしかない。
しかもその行法は、誰でも知っている行法よりもはるかにハードで効果的である。
もしかすると麻原は、自分のオリジナルの修行法を作り出したかったのかもしれない。
最高度のヨーガ行法であるヴァヤヴィヤとアパンクリアは、パイロットババから伝授されたもの。
自分のオリジナルではない。
麻原には、そんな寂しさがあったのかもしれない。