作業はこれで終わりではなくもうひとつあった。
液体窒素のボンベを運び、ほんの少しずつ溶液の中へ出て行くようにする。
冷やすことが目的なのではなく、これから培養する細菌のエサの補充のためだ。
準備が出来たので、広瀬が遠藤を呼びに行った。
遠藤は持ってきた試験管の中身を溶液の中へ流し込んだ。
後はポンプが十分に混ぜ合わせてくれる。
遠藤が「やって見せるから憶えてくれる。」といって実際の手順をやり始めたのだが、その程度のことなら1回見れば十分だった。
最初はドラム缶に異常がないかの確認。
蓋はきちんと閉まっているか、ポンプは正常に動いているか、設定温度は守られているか、液体窒素のボンベは空になっていないか。
次にマスクと手袋をつけ、アルコール消毒。
使用する器具類も同様に消毒する。
ドラム缶から溶液を取り出し、ピペットで正確に計量する。
デジタルスケールを使って、試薬も同様に正確に計量する。
試験管の中でガラス棒を使って混ぜ合わせ、完全に溶けたら専用の計測器に入れてその数値をノートに書き入れてグラフにも記入する。
作業が終われば使用した器具類を水洗いし、その水をポリタンクに入れる。
もう一度水洗いしてポリタンクにいれその蓋を閉める。
最後にアルコール消毒してしてティッシュでふき取る。
使用したマスク、手袋、ティッシュはビニール袋に入れ、その口を縛る。
僕の作業手順に問題がないことを確認した遠藤は、20分に1回計測するように言って出て行った。
この後、僕は一人でこの作業を2日間続けることになる。