車は県境を越えて静岡から山梨へと入った。
不審な車は相変わらず後を付いてくる。
関係のない脇道にそれて車を止めたりしても、向こうも離れたところに止まって動かないでいる。
周りには民家どころか何の建物もない。
田んぼと畑だけの自然豊かな場所ではお互いに隠れる場所もない。
そのままでいるわけにもいかないので、仕方なく不審な車を引き連れたまま上九へ向かうことになった。
前回の印刷工場とは違う別の場所。
どこが隣地との境界線か分からない広大な土地に、すでに巨大な建造物が建てられていた。
敷地の入り口から50メートルぐらいはなれているだろうか。
ぱっと見た目は富士の道場と同じぐらいの大きさに見える。
一体何のための建物なのだろう。
そして、右手前にコンテナが置かれ、その向こうに大小のいくつかのプレハブがあった。
不審な車は少し離れた場所に止まっている。
スーツを着た男が降りてきて、こちらへ歩いてくる。
僕とサマナはその男の方へ向かった。