オウムが何かやり始める場合、最初に動くのはCBIである。
建物がなければ、CSIもCMIも動きようがない。
そして、そのCBIの動きの前兆になるのが測量である。
道場の裏手の空き地で測量をやっていたので、何をやっているのか聞いてみると馬小屋を建てるらしいことが分かった。
本気で馬を飼う気なのかと思ってびっくりしたが、これとは別にもうひとつの動きがあった。
それまでの人生経験では見たことがない、大量の鉄板と鉄骨。
ビルでも建てるのか?と思うほどの鉄の塊を使って、朝から晩までぶっ通しで溶接作業が行われ始めた。
夜、作業を終えたCBIのサマナに話を聞いてみると、目をつぶるとずっと火花が見え続けて眠ることが出来ないと言って嘆いていた。
時間の経過とともに、その鉄の塊の正体が明らかになっていく。
いったい何に使うのか分からないが、とてつもなく巨大なタンクだった。
そのタンクをいくつも作り、10トントラックに乗せてどこかへ運んでいく。
馬小屋のほうは、軽トラに山盛りに積んだ藁をテレビでしか見たことがなかった先が3つに分かれたでかいフォークのようなもので地面に下ろしているのを見ると、いよいよだなという気がしてきた。
おそらくだけど、僕も含めてその時富士の道場にいた普通のサマナたちは、馬小屋と巨大タンクの意味を知らなかったのだろうと思う。