2023年12月の東京都議会本会議の一般質問で、「インクルーシブ教育支援員」が実現することになったと報告しましたが、そのほかの質問についても報告させていただきます。

 

2023年12月13日の東京都議会本会議一般質問

 

 

 

インクルーシブな遊びのプロフェッショナル「プレーリーダー」をインクルーシブ公園に配置したい

 

<龍円議事録>

つい先日、ダウン症がある我が子(ニコ)と公園で遊んでいた時に起きたことをお話しします。

 

ダウン症のある子の多くは、人が大好きで、そして距離感が一般よりやや近すぎるという特徴があります。

 

息子は、公園にいた4人組の小学生と一緒に遊びたかったようで、満面の笑顔で近づいて、手で頭を撫でたところ、大きな声で「なにこの子!気持ち悪い!」と逃げ出されてしました。

 

意味がわからない息子は「鬼ごっこ」と勘違いしたようでついて行こうとしたのですが「無理、来ないで」という険しい声がけがありました。そこでようやく理解して、着いていくのをやめたのですが、寂しそうな表情からすると、息子なりに傷ついたようでした。

 

その後も、たまたまその小学生たちが遊んでいる遊具に近づいてしまうと、「きもーい」と4人が笑いながら逃げるというのが繰り返されました。

 

こういう体験を、これまで何度も経験してまいりました。

 

こちら側から見える景色としては、そのまま放っておけば「障がいのある子への差別やいじめ」につながる可能性のある行動のように見えます。

 

しかし、相手の子たち側から見れば「公園で気持ち悪い子が近づいてきたから、身を守るために逃げた」という記憶になっているはずです。

 

ここにある認識の隔たりは、どうやって埋めていけばいいのでしょうか?

 

 

2023年10月都立砧公園みんなのひろばで

プレーリーダーの神林さん、乙武洋匡さんや空くんと遊びました

 

都立砧公園みんなのひろばが「インクルーシブ公園」として整備されて以来、今や全国にその動きが広がりつつあります。

 

インクルーシブ公園では、多様な子たちが自然に一緒に楽しく遊び交流することでインクルーシブな心が育ち、その地域にインクルーシブコミュニティが広がっていくことが期待されています。

 

しかし、インクルーシブ遊具をポンと設置しただけでは、理想とする交流が生まれるわけではありません

 

実は、先ほどの我が子の経験は、ある基礎自治体が「インクルーシブ公園」として再整備した遊具広場で起きた出来事でした。

 

重要なのは、整備後のソフト面の運用です。

 

インクルーシブな遊びプログラム」を継続的に実践したり、インクルーシブな遊びのプロフェショナルである「プレーリーダー」を配置することが効果的です。特にプレーリーダーは、さまざまな違いによる戸惑いや不安を安心に変えながら、相互理解を深め、公園全体をインクルーシブな対話ができる空間にすることができます。

 

Q. そこで東京都のインクルーシブ公園においても、「プレーリーダー」を配置した豊かな遊び体験を通じて、スペシャルニーズのある子、ない子、多様な子たちが一緒に楽しめる公園づくりを進めるとともに、インクルーシブ公園のあり方そのものをさらに牽引してもらいたいと考えますが、見解を伺います。

 

 

 

<東京都建設局答弁>

インクルーシブな公園づくりについてでございますが、都立公園では遊具広場の改修等の機会を捉え、ユニバーサルデザインの遊具の整備や、体験会の開催など、誰もが気軽に楽しめる環境づくりを進めております。

 

今年度(2023年度)、府中の森公園では、プレーリーダーのサポートの下、遊具の使用が困難な重度の障害のある子供たちが、分身ロボットを活用し、他の子供たちと一緒になって遊具の体験ができるイベントを開催いたしました。

 

また、砧公園では、プレーリーダーが子育て支援団体等に来園を呼びかけ、遊具を使った遊びへの参加につなげてまいります。

 

こうした取組の成果を踏まえながら、誰もが楽しめるインクルーシブな公園づくりを推進してまいります。

 

インクルーシブ遊具で遊ぶ空くん

 

 

 

 

東京都発注の工事の仮囲いに「インクルーシブアート」を

 

次に公共空間におけるインクルーシブアートです。

 

 

 

「異彩を、放て」をキャッチフレーズに、知的障害のある作家の作品をさまざまな形で公共空間に展示しているへラルボニーは、芸術として正当な評価を作り出し、作家が経済的に自立していくことを支える仕組みを作っています。

 

 

2022年に渋谷区東2丁目に制作したインクルーシブアート

 

 

 

 

一方で、昨年渋谷区の都営バス営業所裏の壁に、スペシャルニーズのある人やない人300人以上が関わって制作したインクルーシブアート(渋谷みんながつなるインクルーシブアート)は、街に彩りを生み出し、人通りを増やし、長年の課題だった落書きを防止しています。

 

参加者からは「子どもの作品が展示されたことで、障害のある人がこの街にも暮らしているんだと知ってもらえた」「いつも福祉に支えられることが多いが、街の美化に貢献できる側になれたことが嬉しい」と言う声をいただきました。

 

公共空間におけるインクルーシブアートは、多くの効果があります。

 

Q. 東京都ではさまざまな工事を発注していると思いますが、その工事現場の仮囲いにインクルーシブアートを飾った場合、工事成績として評価することで、こういう取り組みを都としても後押ししていくべきだと考えますが、見解を伺います。

 

 

<東京都財務局答弁>

(東京都が発注する)工事受注者の"社会的貢献"に対する評価についてのご質問にお答えいたします。

 

都は、受注者の適正な選定及び指導育成を目的として「工事成績評定」を行っておりまして、具体的には、基本的な「技術力」及び「成果」の評価と、「創意工夫」や「社会的貢献」等への評価によりまして、これを実施しております。

 

「社会的貢献」に関しましては、周辺地域の景観に調和させた仮囲いへの装飾、あるいは清掃などのボランティア活動などにつきまして受注者が関係部署と調整し自発的に行った場合、取組内容に応じて加点できる仕組みとしております。

 

社会福祉施設の工事におきまして、当該施設の利用者の作品を仮囲いに掲示した例がございます。今後とも、工事成績評定制度の適切な運用を図ってまいります。

 

(ヘラルボニーの作品が仮囲いに・ヘラルボニーHPより)

 

 

 

障害者への虐待がない社会へ共生社会実現に向けた相談窓口

 

次に障害者への虐待がない社会にするための質問です。

 

精神障害のある患者が長期入院している病院(八王子市滝山病院)で、患者に対する虐待が日常的に行われていたことが明るみに出て以降、当事者やその家族に、暗い影を落としています。

 

障害者は、虐待を受けるハイリスク層にあり、日常生活のあらゆる場面で、虐待を受ける可能性があります。

 

今年(2023年)7月に厚労省が出した「障害者虐待の防止と対応の手引き」によると、障害者虐待は、いわゆる一般的に誰もが想像する虐待だけではなく、障害の特性により起きやすい虐待もあります。

 

厚生労働省「障害者虐待の防止と対応の手引き」

https://www.mhlw.go.jp/content/001121499.pdf

 

手引きには、障害者に対する虐待について具体的に分かりやすく説明が記載されています。

 

虐待について5つのカテゴリーを設けていて、それぞれの具体的な例が示されています。たておば「心理的虐待」は以下の通りです。

 

 

専門家が見れば「これは虐待だ」とすぐに分かる(明らかに障害者に対する虐待である)状況であっても、(障害者への虐待をしていると)指摘された側は「大袈裟すぎる」と理解していただけないことから、状況が改善されないことがあります。

 

 

また、令和6年4月1日施行の「改正・障害者差別解消法」において、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が全国的に義務化されることになりました。

 

Q.こうした社会情勢を踏まえて、都においては、スペシャルニーズのある方が日常生活で障壁に直面した際や、障害者が虐待を受けた・受けたと思われる際、まわりの関係者が障害者虐待を発見した際に、専門的な知識のある人に相談できる体制を確保していくことが必要です。また相談できる窓口へのアクセシビリティを向上することについても重要になると考えます。都の取り組みについて伺います。

 

 

<東京都福祉局答弁>
障害者の相談窓口についてのご質問でございます。
 
都は、「東京都障害者権利擁護センター」を設置し、障害の種別を問わず、不当な差別的取扱いや合理的配慮の提供に関する相談、障害福祉サービス事業所や企業などでの障害者虐待に関する相談などに対応しております。
 
これらの相談は電話やメールなどで受け付けるほか、パソコンやスマートフォンからも入力しやすい受付フォームを作成し、相談者の利便性向上に努めております。
 
今後、センターの周知をさらに図るとともに、設置の準備を進めております精神科病院での虐待の通報窓口」とも相談内容を共有し、状況に応じ迅速な対応につなげるなど、障害者の権利擁護を一層推進してまいります。

 

東京都障害者権利擁護センターでは、障害者に対する差別や虐待について相談できます。また障害者差別について、相談支援で解決しない場合は「調整委員会」にてあっせんや勧告する仕組みがあります。

 

東京都障害者権利擁護センター相談フォーム

 

 

 

 

精神保健福祉法の改正により、令和6年4月から、精神科病院における虐待通報が義務化されます。都では、精神科病院における虐待の未然防止や早期発見の取組を進めるため、常設の虐待通報窓口を開設し、精神障害に関する専門的な知識や経験等を有する職員が、通報や相談を受け付けます。
 

<精神病院における虐待通報窓口>

平日午前9時00分から午後5時00分まで(土曜日・日曜日・祝日、年末年始は除く)

 

通報するべき人:

精神科病院で職員による虐待を受けたと思われる精神障害者を発見した方

精神科病院で職員による虐待を受けたご本人又はそのご家族

 

通報先:

03-5320-4463

seishin-tuho(at)section.metro.tokyo.jp
※迷惑メール対策のため、メールアドレスの表記を変更しております。お手数ですが、(at)を@に置き換えてご利用ください。

 

〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号
東京都福祉局障害者施策推進部精神保健医療課 虐待通報窓口

 

問い合わせ先:
福祉局障害者施策推進部精神保健医療課
電話 03-5320-4462