2025年6月2日 読売新聞オンライン
飼い主のいない犬や猫を保護する「いしかわ動物愛護センター(通称・しっぽのかぞく)」は4月で開所1年を迎え、初年度は計395匹が新たな飼い主に譲渡された。取り組みが功を成し、県によると県内の犬猫の殺処分は3年連続でゼロとなった。(平松千里)
マッチング室でサヨリと触れ合う井波さん(津幡町で)
「人なれしているね」。夫と4月下旬にセンターを訪れた金沢市の井波成子さん(59)が、推定2歳のメス猫「サヨリ」の頭を優しくなでた。井波さんは昨年5月にセンターで猫を引き取り、今回はその仲間となる2匹目を検討しているという。
センターは県が2024年4月に津幡町の県森林公園内に設置した。県獣医師会の獣医師や訓練士ら14人が駐在し、犬17匹と猫45匹(5月23日現在)を飼育している。譲渡希望者は、犬猫と触れ合う「マッチング室」で相性を直接確かめることも可能だ。井波さんは「実際に触れてみて、その猫の性格が分かった気がした」と振り返った。
約1000平方メートルの木造平屋の施設内で収容できるのは、最大で犬30匹と猫70匹。金沢市を除く各市町の保健所が保護した犬猫を引き取り、人なれの訓練や病気やけがなどの治療をしている。
昨年度は能登半島地震や奥能登豪雨で飼い主と離ればなれになったり、行き場がなくなったりした犬猫も多く、計481匹が集まった。前年度に県が保護した364匹よりも多かった。譲渡数も10年度以降では最多となった。
センターでは犬の飼い方を教える教室や小学校への出前講座なども実施しているが、引き取り後に返還された事例もあり、今年度からは相性などを細やかに確認できるよう譲渡までの手順を増やしたという。
大矢英紀所長(59)は「命を大切にできる人に譲っている。飼う場合は最期まで責任を持ってほしい」と呼びかけている。
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県は4月に「いしかわ動物愛護基金」を設け、ふるさと納税のサイトや県庁などで寄付を募っている。虐待を受けた犬猫を人にならす訓練や、ボランティア団体の活動支援など動物の命をつなぐ事業に活用する予定だ。