2025年2月25日 FRIDAY DIGITAL
「3匹の犬が、狭いスペースに押し込められたケージもありました。ケージ内には糞尿や新聞紙が15㎝以上も積もっていた。室内は強烈な悪臭に満ち、日の当たらない薄暗い空間に犬やウサギ40匹近くが7年間も閉じ込められていたんです」
埼玉県幸手市で40匹近い犬やウサギが7年間も放置されていた現場。ケージ内は糞尿が溜まり、悪臭に満ちていた(提供:福本美帆(保護動物シェルター『BeSail_Animal』代表))
【画像】すごい…「犬猫レスキュー」が見た″ペットたちの凄絶虐待現場″
こう語るのは、保護動物シェルター『BeSail_Animal』代表の福本美帆氏だ。
福本氏は飼い主にネグレクト(飼育放棄)された猫や、野犬となった犬などをレスキューする活動を’19年7月から続けている(以下、コメントは福本氏)。
「各自治体の保健所が引き取り処分した動物の数は環境省の調査でわかりますが、私たちのような民間団体が保護した数については統計がありません。実感としては年々増加している。保護した犬や猫は、まずワクチンを打つなど初期医療を施(ほどこ)します。食事を与え元気になり人間に慣れたら、里親を募集するんです」
冒頭で紹介したのは、福本氏が目の当たりにした″凄絶な虐待現場″だ。
「『(犬やウサギを)20匹くらいもらってくれないか』と、周囲に話している男性がいると聞いたのは昨年9月です。おかしいなと感じ、埼玉県幸手(さって)市内の男性のもとへ行き驚きました。動物が飼われている建物に入ると、シャッターが締め切られた20㎡ほどの部屋で、3段に積み重ねられたケージ内に犬19匹、ウサギ19匹が閉じ込められていたんです。
飼い主の70代の男性は’17年ごろにペットショップを廃業し、以来7年間も『死なない程度』にエサを与えるだけで動物たちを放置していたとか。内部は汚物まみれ。なかにはお腹が空(す)きすぎて、自分の糞を食べているガリガリに痩(や)せた犬もいました」
廃業した男性は「売れなくて悔しい」と話すばかりで、反省の言葉はない。さらに犬の前足だけ持って運ぼうとするなど動物を粗雑に扱っていたため、福本氏らが引き取り保護することになった。
◆犬と豚が不自然に肥えたワケ
山梨県中央市の養豚場では、想像を絶する光景を目にすることになる。
「昨年1月のことです。近くに住む知り合いのボランティアが、犬が吠え養豚場から悪臭が漂うのを不審に思い私に知らせてくれました。現場に向かうと、奇妙な動物たちがいます。普通、虐待を受けた動物は痩せてしまうものです。しかし養豚場には、不自然に丸々と太った豚9匹、犬35匹がいました。養豚場の経営者は、学校で余った給食などを引き取る残飯処理業者でもあった。引き取った残飯を処理するため、豚や犬へ強引に食べさせていたんです。炭水化物の多い人間の食物を食べさせられ、動物たちは栄養過多になっていたのでしょう」
犬たちは逃げられないように、首に鎖が食い込むほどきつく係留(けいりゅう)され自由を奪われていた。さらに豚1頭の死骸が敷地内で焼かれていたことがわかり、警察を呼んで養豚場の経営者に動物を手放すよう説得することになった。
「明らかな動物愛護管理法違反でなければ、飼い主に引き渡しを拒否されると私たちは手出しできません。時には警察に協力してもらうこともあるんです。いくら虐待していても、飼い主には『動物たちは自分の所有物』という意識が強い。説得するには『飼育放棄はダメでしょ!』と上から目線で批判するのではなく、『たくさんの動物を育てるのは大変でしたね』と同じ立場で話し合うことが大切です。理解してくれていると飼い主が感じれば、心を開き動物たちを引き渡してくれるケースが多々あります」
現在、福本氏のシェルターでは28匹の犬と8匹の猫を保護している。
「エサ代や医療費などで月に50万〜60万円かかります。カメラを設置し犬が吠えるなど異変があれば、夜中でも私の携帯に通知が届く。365日休みなく、朝から晩まで活動しています。ただ犬や猫が好きなので苦にはならない。飼い主にはペットに愛情を注いでほしいです。おカネ儲けの『道具』として粗末にせず、命ある『家族』として大切に接してください」
福本氏は「犬や猫が被害を受けているという知らせがあれば日本全国どこでも行く覚悟です」と話す。
『FRIDAY』2025年2月21・28日合併号より