2023年12月21日 まいどなニュース
12月の日曜日の昼前。「犬を飼っている近所の方が、愛犬が見当たらず探し回っている」と自身の母親から聞いた、しぐさん・猫とパン好きニャー(@sigmabi)。
騒ぎを聞きつけた近隣住民も捜索に参加しますが、飼い主さんが「鳴き声が聞こえた」という場所を探しても姿が見えません。現場の状況から、ワンちゃんは排水溝に落ち、そこから「雨水マンホール」の下まで進んでしまったと推察。しかし、配管がどこに繋がっているのか誰も知らず、途方に暮れていました。
雨水マンホールから救出された盲目の高齢犬。下水管に擦れた際に怪我をしたのか、背中には大きなすり傷が…(画像提供:しぐさん 猫とパン好きニャーさん @sigmabi)
しぐ母さんから「マンホール」の開け方を聞かれたしぐさんも、自宅での仕事を中断してワンちゃん捜索に参加。ネット検索で出てきた「警察経由で消防に連絡」という方法を、飼い主さんと近所の方に伝えます。
行方不明のワンちゃんは「盲目」
しかしこの日は「日曜日」。マンホールを管理する水道局の返答は、「休日で上長がおらず判断できない」。消防も「人命優先のため動けない」との返答。警察は「とりあえず現場に行くが何もできない」という返答だったそうです。
飼い主さんの知人で、「愛犬がマンホールに落ちたことがある」という方から、「ホースを突っ込んで押し込むような形で救助ができた」と聞き試したところ、ホースを差し込める場所から鳴き声が聞こえたマンホールまではホースの長さが足らず、失敗。しかもなんと、行方不明のワンちゃんは目が見えないのだそうです。
しぐさんが描いた救出現場の状況(イラスト提供:しぐさん 猫とパン好きニャーさん @sigmabi)
弱っていく犬の鳴き声…XにSOSを投稿
どうにか救出方法がないか、X(旧Twitter)にSOSを投稿したしぐさん。
「消防も警察も対応NG、担当が下水局なので連絡したが日曜なので誰もいず…。マンホールが開けられればまだなんとかなりそうなんですが、鍵がいるんですよね…」
こんな絶望的な投稿をしたタイミングで、警察官が現場に到着。さらに、休日にも関わらず市役所の道路課の方も到着し、マンホールの蓋を開けるための器具を取りに戻りますと、役所に向かってくれたそうです。
この時点ですでにワンちゃんがいなくなって2時間近くが経過。鳴き声はかなり弱々しく小さくなっていたそうです。消えかかる愛犬の命の灯火を前にして、飼い主さんがダメ元で消防に再度相談。すると、「出動要請が入ったらそこで即終了します」という条件で現場に来てくれることになったそうです
獣医師「あとちょっとでも遅かったらダメだった」
その際の様子を、「ワンちゃん、背中に傷があり水で濡れてびしゃびしゃで震えていて、飼い主さんが急ぎ連れ帰って今拭いてあげてるところです。ご心配くださった方、ひとまずありがとうございます」「飼い主さんが家に連れ帰って濡れてるのを拭いてから、急ぎ動物病院へ行かれたそうです。獣医さんいわく『あとちょっとでも遅かったらだめだった』とのことで、紙一重で消防が出動してくれて助かったようでした。今はこたつで寝てるそうです」と、Xに投稿していたしぐさん。
しぐさんに伺ったところ、「いつもは飼い主さんが十分に気をつけているそうなのですが、状況から判断して、何かの拍子に外に出てしまい、目が見えないため排水桝に落ち、そのまま排水路に入りこんでしまったのでは」とのことでした。
消防も警察も「人命救助優先」、一般人がマンホールに入るのは危険
「基本、消防も動物の救助は通常業務ではないため、他の出動がなければ/ご好意で、出動してくれる場合があるという認識でいないといけません。警察もマンホールを開ける業務はないので、平日なら水道や下水の管轄(蓋の表示のところ)へ連絡。ただし休日は絶望的」「もし側溝が開いたとしても、一人の場合はむやみに中へ入らない(今回、思ったより深かったので断念した)。水が濁ってて底が見えず危険です。今回たくさんの人が出てきての救出になりましたが、昼間だったからというのもあるでしょう。ワンちゃん助かった良かったです」と、Xに投稿していたしぐさん。
元気になり、久々に外に出たワンちゃんと再会したしぐさん。「普段はこんな風にモコモコした子なので、発見時は水に落ちて濡れていた上、背中も怪我をして毛が抜けていたのでは…と思います」と、しぐさん(画像提供:しぐさん 猫とパン好きニャーさん @sigmabi)
Xに投稿したワンちゃん救出時の写真は、「排水溝の中の状況を確認するために起動したスマホのカメラに偶然写っていたもので、他にも画像が残っていましたが、ほぼ自分の足しか写ってません(苦笑)」と、しぐさん。張り詰めていた気持ちがゆるんだのか、排水溝の重い鉄の蓋を元に戻す際、しぐさんは指とヒザを負傷してしまったそうです。
救助されたのはインスリン接種が必要な18歳の高齢トイプーさん
「ワンちゃんはすぐに動物病院へ連れて行ってもらい、翌日からはもりもりとごはんも食べ、すっかり回復したそうです。飼い主さんに聞いたところ、ワンちゃんはトイプードルさんで、年齢は18歳なのだそうです。白内障で目が見えず、糖尿病でインスリン接種が必要なため、もし洗濯の時間帯で下水の量がもっと多かったら、もしあと少しでも消防の方の到着が遅れていたら…と思うと、本当に来て頂けて良かったです。飼い主さんは後日、消防署にお礼にいかれたそうです」(しぐさん)
「ワンちゃんは下水管に擦れて背中に怪我をしたものの感染症にもならず、傷跡は無事にカサブタになっていました」と、しぐさん(画像提供:しぐさん 猫とパン好きニャーさん @sigmabi)
人の力が繋いだ奇跡の救出劇をいつか「マンガ」に
救出されたトイプーさんはもともと目が見えず、7歳の頃、今の飼い主さんのところに迎えられた元保護犬なのだそうです。
「本当にたくさんの方が繋がったことで救助できました」と語るしぐさん。多くの人のおかげで繋がった奇跡の救出劇を、「いつかマンガにして描きとめておけたら」と考えているそうです。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)