猫のセンター収容数、高止まり 「殺処分ゼロ」に暗雲 神奈川 | トピックス

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2023年10月10日 毎日新聞

 

「保護猫がこれ以上増えてしまうと、苦しい状況だ」。県動物愛護センター(神奈川県平塚市)では2014年以降、保護した猫の「殺処分ゼロ」が続いてきた。だが、今年はその先行きに暗雲が垂れこめているという。何が起きているのか。

 

 9月中旬、愛護センターを訪れると、保護猫用の区画には所狭しとケージなどが並び、多数の猫が収容されていた。センターは最大で約90匹の収容が適正とされるが、22年夏ごろからは170~190匹で推移している。

 

 センターの愛護・指導課の広井恵津子さんは「人手が足らず、猫のサポート担当ではない職員が対応せざるを得ない時もある。やりくりして、何とかしのいでいるのが現状だ」と明かす。

 

 猫の収容数が高止まりしている要因の一つとして、新型コロナウイルスの流行で増した「巣ごもり需要」が落ち着き、譲渡希望者が減少したことがあるとみられている。

 

 センターは21年に「多頭飼育」の崩壊で一度に130匹を保護したこともあり、収容数は一時250匹に達した。だが当時は、新型コロナ禍のまっただ中。多くの譲渡希望者がおり、収容数は約100匹まで減った。

 

 その後、新型コロナの行動規制もなくなり、ペットの人気も陰りが出た。22年の年間譲渡数は約270匹で、21年から半減。収容数も適正を超える状況が続く。広井さんは「外出する機会が増えたことに伴い、譲渡数が伸び悩んでいる」との見方を示す。

 

 県は19年にセンターを建て替えた際、「生かすための施設」に転換する目的で、殺処分設備を撤去した。ただセンターには、このまま猫の収容数が増え続ければ、殺処分を再検討せざるを得なくなるのではないかとの危機感がある。

 

 譲渡希望者が増えない中、県は放置される猫を増やさないための取り組みを進めている。避妊去勢の手術代の捻出が難しい人向けに補助金を出したり、地域の保健所と連携し、多頭飼育が崩壊しているかどうかの確認や見守り活動を実施したりしている。

 

 広井さんは「猫は20年ほど生きる動物。飼い主の務めとして、自身の事情や生活状況をよく考え、想像したうえで飼ってほしい」と訴えている。【牧野大輔】