2022年9月12日 河北新報
動物愛護週間が20日から始まる。人と動物が安心して暮らせる社会を目指し、イベントや広報活動が行われる。
一般社団法人ペットフード協会の推計によると、新たに犬や猫を飼い始めた世帯は2020年、21年と2年連続で前年を上回った。新型コロナウイルス禍をきっかけに、ペットに癒やしを求める世帯が増えたとみられる。
飼い主にとって、ペットは家族の一員。近年、自然災害が多発している。病気や事故はもちろん、災害からもペットを守れるように、日頃から備えておきたい。
東日本大震災ではいったん避難した後、ペットを避難させるために自宅に戻り、津波に巻き込まれた飼い主がいた。混乱の中で飼い主とはぐれた犬や猫も続出した。
教訓を踏まえ、環境省は2013年にペット救護のガイドラインを策定。ペットと一緒に逃げる同行避難の原則を初めて打ち出し、避難所に飼育スペースの設置を促した。
18年に改訂し、ペットの健康と安全を守る責任は飼い主にあることと、飼育用品の備蓄、予防接種など事前にすべきことを明示している。
中でも、決められた場所で排せつしたり、ペット用のおりに入ったりといったしつけはとても重要だ。避難所でおとなしく過ごすことができれば、周囲に迷惑がかからない。ペットにもメリットがあり、慣れておくことでストレスをため込まなくて済む。
策定から9年になるが、同行避難の浸透は道半ば。災害発生のたびに、ペットを連れて避難所に行って他の避難者とトラブルになったり、避難所に入れず車中泊を続けたりした話が聞こえてくる。
一方で、日本は犬と猫の数が15歳未満の子どもの数よりも多い。避難する住民の一定数がペットを連れてくると考えるのが現実的だ。
ガイドラインは同行避難について「ペットと飼い主が同じスペースで過ごすことではない」と説明している。犬や猫が苦手な人がいるほか、避難所が人であふれた場合は配慮が必要だからだ。
ただ、過去の被災地の実例をみると、一般の避難者と分けて飼い主とペットが過ごせるスペースを設けた方が円滑な運営につながっている。
津波や豪雨災害の場合、避難所で受け入れてもらえるかどうかと飼い主が二の足を踏んでいては、逃げるタイミングを逸しかねない。
そうならないように、飼い主は普段から地域と交流しておきたい。避難訓練があったらペットと参加し、同行避難の希望を伝える。飼っていないと分からないこともあるので、運営にも関わろう。
ペットの安全を確保する上で最も大事なことは何か。それは飼い主が無事でいることだ。早めに避難したり、家具の転倒防止策を講じたりして自らの身を守り、さらには大切な家族を守ってほしい。