2022年9月8日 上毛新聞
劣悪な環境で犬約30匹を飼育し虐待したとして、群馬県警沼田署は7日、動物愛護法違反の疑いで、桐生市、建設業の男(69)を逮捕した。病気やけがの処置をせず、死骸を放置していたという。
逮捕容疑は7月21日、沼田市利根町高戸谷の犬飼育場で飼っていた犬約30匹のうち、病気やけがのある犬に適切な保護をしない虐待を行っていたほか、8月16日には犬の死骸を放置した状態で飼育を続けて虐待した疑い。
同署によると、「間違いありません」と容疑を認めている。7月21日、県動物愛護センターの職員から通報を受け、署員が同日と8月16日に現場を訪れて発覚した。
同署は、男が7月初旬ごろから同所で飼育を始めたとみて、飼育目的などを調べている。犬は現在も飼育場にいるが、同センターへの委託が検討されている。
現場はソバ畑が広がる山中で、周囲に人家はない。フェンスで四方を囲った区画に、犬が放し飼いにされている。中には木製の犬小屋やドッグフードの袋、飲み水用のトレーなどが置かれている。犬は全て柴犬とみられ、成犬のほか子犬もいた。
現場近くに勤務する男性(45)らによると、男は2年ほど前から、市内の別の場所で犬を飼っていた。当時その飼育場所から「犬が逃げた」などの通報があり、同署が男に対し指導していた。その後、飼育場所を現在の場所に移したという。
動物の飼育を巡る問題では、県動物愛護センターや愛護団体に近年、多頭飼育に陥った飼い主からの相談や周辺住民からの通報などが多く寄せられるようになっている。
同センターによると、昨年度に犬猫への虐待が疑われるとして171件の相談や通報があった。動物愛護に取り組むNPO法人群馬わんにゃんネットワークは、本年度は既に10件を超す多頭飼育現場の支援に入るなど対応に追われている。
県警生活環境課によると、県内で動物への虐待行為などによる動物愛護法違反容疑での摘発件数は2012~19年は年間ゼロか1件だったが、20年は4件、21年は2件、22年は8月末時点で既に4件と増加傾向にある。
同法人の飯田有紀子理事長によると、多頭飼育に陥る飼い主の中には「いつの間にか増えてしまった」「経済的に苦しくなり避妊去勢ができなかった」という声もあり、「ペットブームによる安易な動物の飼育が問題の一因になっている」と指摘している。