日比谷公園の「地域猫」がゼロに 愛猫家団体、長年の保護活動実る | トピックス

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2022年4月4日 毎日新聞







 東京都心の日比谷公園(千代田区)から、去勢・不妊手術を施されてボランティアに見守られてきた「地域猫」の姿が消えた。残っていた3匹が今年1月、新たな飼い主を探すために相次いで保護された。2000年ごろには捨てられたり繁殖したりして飼い主のいない猫が60~80匹はいたとされる日比谷公園。長い時間をかけて健康チェックや駆虫を徹底し、飼い主を見つけたのは、猫たちが次々と死ぬ惨状に心を痛めた愛猫家団体だった。



 この団体は01年発足の「ちよだニャンとなる会」(18年から一般財団法人)。猫に関する著作があるライターの香取章子さんが代表理事を務め、周辺の官庁やオフィスで働く人たちを含め、約50人がボランティアとして活動している。今年2月には、保護猫とふれあえる2軒目のカフェを区内でオープンした。


 「ニャンとなる会」によると、最後の猫は茶トラの「チビ」(オス・推定12歳)で、1月26日夜に保護した。餌やりをしていた人たちにあらかじめ餌を与えないよう呼びかけ、餌を入れた捕獲器を使った。これに先立つ23日には、カラスに襲われて負傷した別の2匹も保護していた。3匹は提携先の動物病院に隔離されて入院。健康チェックやウイルス検査、寄生虫の駆虫、けがの治療を済ませている。現在は譲渡会などによる飼い主探しに先立ち、人に慣れるよう、ボランティアらが面倒を見ている。


 「ニャンとなる会」が日比谷公園の状況改善に乗り出したきっかけは、区が00年に始めた、飼い主がいない猫に対する去勢・不妊手術費用の助成事業だ。対象地域は区内全域。区が保健所のスタッフとともに活動するボランティアを募集し、その過程で「ニャンとなる会」が結成された。


 香取さんによると、公園の環境は猫にとって必ずしも快適ではない。猫たちは草木の茂みや根元のあちこちに居着くものの、夏の暑さや冬の寒さ、車や自転車にはねられる事故のほか、カラスやハクビシンの襲撃にさらされ、次々と死んでいく。ボランティアの人たちはこうした状況に心を痛めながらも「捕獲し、手術し、(公園に)戻す」を繰り返した。10年ごろには、公園内にいる猫の繁殖は見られなくなった。


 ◇駆虫や餌代…費用に課題、区が助成


 一方でそのころから、去勢・不妊手術を経て公園に戻した猫を改めて保護し、飼い主を探す活動も始めた。猫にとって、人に飼われることなく屋外で生き続けるのは過酷だからだ。「保護された猫は安心してか、死んだように熟睡します」と香取さんは証言する。


 課題となったのは費用だ。駆虫などには1匹あたり約25万円がかかる。飼い主が1年以上見つからないこともあり、預かり場所や餌代の確保も悩ましい。それでも、保護猫を譲渡する取り組みが広く知られ、区が駆虫などに助成するようになったことで、地域猫の数は着実に減った。日比谷公園を含む霞が関地区では、香取さんらが保護、譲渡を済ませた猫は、この20年余で約150匹に上る。


 地域猫がいなくなっても仕事は終わらない。心ない人が飼い猫を捨てたりすることもあり得るからだ。20年施行の改正動物愛護法で、動物の遺棄に対する罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」とされている。香取さんは「動物の遺棄はまぎれもない犯罪です。厳しく監視します」と力を込める。【東海林智】