“動物詐欺”許さない ペット大切にすると思ったのに…虐待 保護団体、引き渡しルール徹底 | トピックス

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2021年12月15日 東京新聞







 ペットの譲渡を巡るトラブルが起きている。中には動物好きを装い、虐待などを目的に猫や犬をだまし取る人もいるようだ。会員制交流サイト(SNS)などで新しい飼い主を手軽に募集できるようになった今、専門家らは譲渡先の身元や飼育環境などを確認するよう呼び掛けている。 (長田真由美)

 「だまそうとする人がいるなんて思いも寄らなかった」。名古屋市内の女性会社員(28)は肩を落とす。今年二月、近所で見つけた生後三カ月ほどの子猫二匹を保護し、情報サイトで飼い主を募集。「二匹とも生涯大事にする」などと応募してきた市内の四十代男性を信用し、猫を一度見に来てもらった上で、二匹を男性の家に送り届けた。その後、男性からの連絡が途絶えて心配していると、数日後に血だらけのクッションと、ぐったりした様子の一匹の猫の写真がメールで送られてきたという。

 女性はすぐに男性の家に向かったが、猫を見せてもらえなかったため一一〇番した。駆け付けた警察官が問い詰めると、男性は「逃げちゃった」と説明。女性は警察官とともに家に入って捜したが、写真の猫は見つからず、残る一匹を引き取ってきた。「尊い命が失われ、責任を感じている」とうなだれる。

◆目立つ子猫の被害


 なぜ動物をだまし取るのか。ペットの問題に詳しい弁護士の細川敦史さん(45)によると、虐待目的のほか、かつては実験動物や三味線の皮に利用するためともいわれたが、はっきりした理由は分からない。ただ、犬はかんだりほえたりするため、主に子猫が被害に遭いがちという。

 「詐欺をする人なのか、見分けるのは非常に難しい」と細川さん。「『相手の家に行く』『実際に話して様子を見る』なども有効だが、こうすれば大丈夫という決め手はない」と話す。

 ペットを引き渡す時のルールを設ける動物保護団体も多い。例年百匹前後の猫を希望者に譲渡している名古屋市西区の保護猫カフェ「ひだまり号」では、ペット飼育可能な住宅▽顔写真付き身分証明書の提示▽家族全員の承諾▽完全室内飼いの約束▽代わりに飼育する保証人▽避妊・去勢手術、ワクチン接種−などの約束を希望者と交わす。さらに一週間のトライアル飼育を経て、引き渡しまでにかかったマイクロチップなどの費用と、一匹二万円の施設協力金を支払ってもらい譲渡する。


◆丁寧な聞き取りを


 運営する祖父江昌子さんは「新しい飼い主が『思っていたのと違った』というのを絶対に避けたい」と力を込める。爪を研ぐ、鳴く、やんちゃな性格などが分かり、「やっぱりやめる」と言う人もいる。そうしたミスマッチを防ぐため、祖父江さんは、本当に猫を家族に迎えたいと思っているか、どんな性格の猫を望んでいるかなどを希望者から丁寧に聞き取る。譲渡後も年に一度、その猫の写真を送ってもらっている。

 大切に飼育する目的以外で動物を引き取ると、動物愛護法違反などで警察に摘発されたり、民事訴訟で慰謝料などが請求されたりする場合もある。冒頭の女性はその後、SNSで、その男性に猫をだまし取られた人を複数見つけたという。「詐欺をする人は、味をしめて複数回重ねていることが多いよう」と細川さん。もし被害に遭ったら「同じような被害に遭っている人が他にもいるなどの客観的事実を集め、弁護士などに相談して」と話す。