◆「群馬VMAT」 災害派遣チームと、全国初
東日本大震災を機に重要性が認識された
、災害時のペット救護。それを組織として
効率的に行おうとする取り組みが、県内
でいち早く進んでいる。県内の獣医師らで
作る災害時の動物医療支援チーム「群馬
VMAT」は昨年11月、災害派遣医療
チーム「DMAT」と、全国初となる合同訓
練を実施、今後、より実践的な訓練も積
む予定だ。(田島萌)
「工場跡に急きょ作ったシェルターに、
犬や猫が入った150個以上のケージが
所狭しと並んでいた。動物たちにはスト
レスだが、人の避難所すら混乱する中、
精いっぱいだった」
群馬VMATを主導する小此木正樹獣医
師(57)(伊勢崎市)は、東日本大震災で
福島県内に設置された動物保護施設(シ
ェルター)の様子をこう振り返る。
群馬VMATの獣医師23人のうち7人
は震災後、福島県と同県獣医師会らが
作ったシェルターの支援に入った。小此
木さんも2011年6月以降、50回以上
出向いて運営を支えた。シェルターには
東京電力福島第一原発事故の警戒区
域に取り残されたり、被災者が避難先
で飼えなくなったりしたペットなどが一時
収容されており、獣医師らが交代で健康
管理に当たったが、それでも態勢は十分
でなかった。
震災でペットを亡くしたり、離ればなれ
になったりした飼い主の精神的ストレス
も大きかった。ペットのために車中泊す
る被災者もおり、被災者の心と体の健
康につながるペット救護の重要性が、
認識される契機となった。
群馬VMATは16年3月、福島県で支援
にあたった獣医師らを中心に、全国で2番
目に結成された。昨年11月には、伊勢崎
市民病院の災害医療活動訓練に初参加。
VMATとDMATが合同訓練を行うのは全
国初だった。
訓練では、一般のけが人役に交じって、
犬や猫、ウサギなどのペットや盲導犬を
連れたけが人役が参加した。窓口で適
切に誘導を行い、同病院のDMATが人
を治療し、群馬VMATが動物の手当て
や一時預かりを行う流れを確認。同病
院の片山和久・外科診療部長(52)は
「日頃の訓練でペットや盲導犬の存在を想
定したことがなかった。ペットを心のよりど
ころにする患者は多く、必要性を感じる」
と話した。
今年1月には渋川広域消防本部の訓練に
も参加し、災害救助犬の体調チェックを行っ
た。群馬VMATの取り組みは、組織作りか
ら実践的な訓練の段階に移行しつつある。
小此木さんは「県内の災害以外にも、首都
直下地震が起きれば多くの避難者がペット
と共に群馬に押し寄せる。対策は急務で、
今後も自治体などの協力を得て実践的な
訓練を積み重ねていきたい」と力を込めた。
〈VMAT(ブイマット)〉 獣医師らで作る
災害時の動物医療支援チームで、医師らで
作る「DMAT」のペット版。震災直後は主に
ペットの治療を行い、その後はシェルター
(動物保護施設)の運営支援、ペットの健康
管理や感染症予防などに取り組む。2013
年6月に福岡県、16年3月に群馬県、今年
1月に大阪府で結成された。