sippo 10月6日(木)11時20分配信
捨てられて保護される犬や猫。
高齢だったり病気を抱えていたりして
新たな飼い主が見つかりにくい場合も
あります。「ペットがほしいけど最後まで
飼えるか不安」というシニア層に、そういう
犬や猫の「受け皿」になってもらおうと
いう動きが広がっています。
横浜市の有料老人ホームで、
高梨司郎さん(78)、玲子さん(73)夫妻は
猫のみー(メス、推定7、8歳)と暮らす。
ホームは「生活科学運営」(東京都港区)
が運営し、ペット同居可だ。
「みーちゃんはわがままな孫です」
飼い始めたのは3年前。司郎さんの
気持ちが沈むことが多くなったのが
きっかけ。動物愛護団体「ちばわん」の
譲渡会で代表の扇田桂代さん(41)と
知り合い、譲り受けた。扇田さんは
「人柄や緊急時に連絡が取れる人が
周りにいるかなどを勘案して、譲渡を
決めています」と言う。
横浜市の病院職員、梶原由美子さん
(79)は、東京電力福島第一原発事故の
あとに福島県川内村で保護されたクリ
(オス、推定8歳)を動物保護団体
「ニュータウン動物愛護会」から
引き取り、育てている。クリは保護した
時から後ろ脚がまひしており、いまも
梶原さんが1日2回、おむつ交換を
している。
梶原由美子さんに引き取られたクリ
梶原さんはクリ以前にも24匹の
保護犬、保護猫を引き取り、みとって
きた。引き取るのはすべて高齢だったり、
病気を抱えていたりする犬猫。「高齢の
子たちなら、自分でもまだ面倒が
見られると思って」と話す。
ニュータウン動物愛護会では、犬猫の
平均寿命を考え、子犬や子猫は
60歳以下の人にしか譲渡しないが、
高齢や病気がちの犬猫は高齢者にも
譲渡している。同団体の日向千絵代表は
「高齢者の方は経済的、時間的に
余裕のある方も少なくない。考慮のうえ、
たとえば65歳の方には5歳以上の
犬猫を譲渡するようにしています」。
動物愛護団体「日本動物福祉協会」
でも、新しい飼い主が見つからない
保護犬、保護猫を、一時的に預かって
もらうボランティアとして高齢者世帯に
期待する。
犬や猫にとっては保護施設で
多頭飼育されること自体がストレスに
なることもある。一方で、ペット本位の
考え方ができる高齢者ほど、自身の
健康や寿命を考慮して新たに犬猫を飼う
ことをためらう傾向がある。このため、
バックアップ体制を整えた上で、
高齢者に一時預かりボランティアを
してもらう。
同協会調査員の町屋奈(ない)・獣医師は、
「一時預かりボランティアという形で
つながることが、双方にとって良い関係に
つながるのではないか」と話している。
飼育放棄ペットの持ち込み増加
■飼育放棄など問題に
ペットと自らの余命を考えて新たに
犬猫を飼育することをあきらめる
高齢者がいる一方で、全国の自治体
では、高齢者が亡くなったり入院したり
などで、犬猫を飼い続けられなくなった
ことによる持ち込みが増加し、問題に
なっている。
改正動物愛護法では、動物の
所有者は「動物がその命を終えるまで
適切に飼養(終生飼養)することに
努めなければならない」と定められて
いる。東京都などは「高齢者による
飼育放棄の増加傾向に強い問題意識を
持っている」としている。また、高齢者に
犬猫を譲渡しない自治体や
動物愛護団体も少なくない。
ほかにも、高齢者が中・大型の犬を
制御できずに逃がしてしまったり、
その犬が咬傷(こうしょう)事故を
起こしたりする事例も全国で
相次いでいる。