琉球新報 2016年9月6日 06:02
沖縄本島北部の国頭村楚洲と安田周辺で
野犬が群れをなし、住民が襲われそうに
なり、飼い犬が咬(か)まれるなどの
被害が出ている。人身被害に至らぬ前に
野犬の捕獲など対策が必要だ。
ヤンバルクイナやケナガネズミなど
希少生物が咬み殺される被害も発生して
いる。野犬だけでなく野猫による被害も
多い。
野犬や野猫の増加は人が捨てたためだ。
県自然保護課によると県内の野犬、
野猫の殺処分数は2014年度で
4250匹に上り、全国7位と多い。
それだけ無責任な飼い主が多いと
みられている。
食べ物を求め群れとなった野犬は
狂暴化しかねない。人が咬まれて大けがをし、
感染症など疾病にもなりかねない。
飼い犬を捨てない基本的なマナーが
県民に求められている。
国頭村によると6月に楚洲、安田周辺で
相当な数の野犬の群れの情報が寄せられた。
このため県動物愛護管理センターと
連携して捕獲器を設置しているが、
1匹も捕獲できていないという。
環境省とも対策を協議しているという。
同村では従来、村内各区に「飼い犬や
猫を捨てず、餌もやらないように」と
文書で呼び掛けている。しかし野犬や
野猫の多くは都市部から持ち込まれるため、
らちが明かない状況にある。
県や環境省は地元任せにせず、
注意喚起の広報活動に力を入れて
もらいたい。
北部だけの問題ではない。
宮古保健所管内は近年の統計で犬による
咬傷(こうしょう)被害が他地区より
突出して多いという。県動物愛護
管理センターによると「2、3匹の野犬の
群れは豊見城市など本島各地で
見受けられる」という。食べ物を求めて
集落近くを行動することが多いという
から要注意だ。
国頭、大宜味、東の3村は近く
「やんばる国立公園」に指定される。
将来の世界自然遺産登録をも視野に、
希少生物の保護は大きな課題だ。
楚洲周辺はヤンバルクイナの
交通事故死が多く、対策の重点地区でも
ある。県と環境省による天敵マングースの
防除事業は、楚洲周辺の根絶を達成した
ばかりだ。
野犬や野猫は北部の野生生物の大きな
脅威だ。その原因を都会に住む県民が
つくり出している。北部へのドライブは
路上の生き物に注意して速度を落とし、
犬や猫を捨てることがあってはならない。