
犬や猫の幸せは人間の手に委ねられている。オークションを待つ子犬
飼い犬や猫が生後何日まで親元にいたか
知っているだろうか。幼い犬や猫が
人気だが、今月1日から49日未満は
販売が禁止となった。早くに親から
引き離すと適切な社会性が身につかず、
かむ、ほえるといった問題行動を起こし
やすいといわれている。販売の日齢を
巡る問題を改めて考えたい。
●幼い犬、猫 人気

オークションを前に身体検査される子犬や子猫=埼玉県内の関東ペットパークで
8月中旬の昼下がり、埼玉県内にある
「関東ペットパーク」には、繁殖業者らが
連れてきた約600匹の子犬や子猫が
集まっていた。一匹一匹、専用の
ボックスに入れられ、獣医師による
身体検査を受けた後、オークション
(競り)にかけられる。日本の
ペットショップの多くが、こうした
生体市場で犬や猫を入手していると
いわれている。
●49日未満出荷禁止
会場の一角に「生後49日未満の
生体は出荷できない」との掲示があった。
2013年9月施行の改正動物愛護管理法
によって、「生後56日(8週)未満」の
犬や猫の販売が禁止された。ただ、付則で
施行後3年間は「45日」、今月
1日からは「49日」となっている。
これまで規制がなかったため、飼育日数が
延びることで生じる経費など
ペット事業者への影響を考慮し緩和措置が
設けられた。
いつ「56日」が実施されるか
不透明な状況に動物愛護団体関係者の
不満は大きい。動物福祉先進国の
欧米の法律では「生後8週」を採用して
いる例が多いからだ。動物との共生を
考える連絡会の青木貢一代表は
「人と共に幸せに暮らすのに犬や猫の
心身の健康は欠かせない。
売れやすさに偏り、置き去りにされている」
と指摘する。
今年3月に札幌市で可決された
「動物愛護管理条例」(10月施行)は
注目を集めた。全国で初めて、
生後8週間は親子を一緒に飼育する
努力義務が盛り込まれたからだ。
●離乳期 社会性学ぶ
生後8週とはどんな時期なのか。
犬を例にすると、離乳期にあたる。
平均的に生後7〜10週の間といわれて
いる。この離乳期に子犬は母犬から
社会性を学ぶ。日本獣医生命科学大講師
(動物行動学)の入交真巳さんは
「離乳が不十分な段階で引き離すと、
子犬の不安傾向が高まると分かっている。
その結果、周囲とうまく関われず、
恐怖心から攻撃的にほえたり、かんだりと
過剰な反応を示しやすくなる」と説明する。
飼いづらく、飼い主が見捨てるといった
不幸な状況を招きかねない。
繁殖歴18年の男性は、生後8週にも
対応できるよう飼育ケージを大きくする
など態勢は整えた。一方で「日々、
犬と触れ合い、離乳期は犬種や個体に
よって差があるのを経験している。
一概に決めるおかしさは感じている」と
言う。
環境省では18年8月までに、
親から引き離す理想的な時期を検討
するため、子犬や子猫の飼い主の
協力を得ながら調査を進めている。
全国14のペットオークション業者で
作る「ペットパーク流通協会」の
上原勝三会長は「販売の日齢イコール
殺処分の原因ではない」と主張する。
競りにテレビCMで人気の白い
ポメラニアンが登場すると、落札価格が
瞬く間に10万円を超えた。流行だけで
安易に犬や猫をほしがる人がいるのも
否めない現実だ。
ペット問題研究家の山崎恵子さんは
「飼い主自身が賢くならなければいけない。
どんな親から生まれ、どんな環境で育った
のか情報を求めるようになれば、
世の中が変わるのではないか」と訴える。
【池乗有衣】